突然のぎっくり腰。動けないほどの痛みの中で「何をすればいいのか」と不安になりますよね。
結論からお伝えします。ぎっくり腰の直後にやるべきことは、次の4つです。
- 一番楽な姿勢をとる(多くの人はうつ伏せか、仰向けで膝を立てると楽になります)
- 痛めた直後〜2日程度は冷やす(楽に感じる場合のみ・1回10分程度)
- 動ける範囲で動く(安静にしすぎると回復が遅れることが研究で示されています)
- 危険なサインがないか確認する(足のしびれ・排尿排便の異常などがあればすぐ受診)
この記事では、リハビリの国家資格を持つ理学療法士が、この4つの対応の具体的なやり方と、痛みを和らげる運動、再発予防までを順番に解説します。
ぎっくり腰とは?どうして突然痛くなるのか

ぎっくり腰とは、重い物を持ち上げた時や急に体をひねった時などに突然起こる腰痛の総称です。医学的には「急性腰痛」と呼ばれます。
多くの場合、腰周囲の筋肉や関節に急な負担がかかることで起こり、日頃の姿勢の悪さ・筋肉の疲労の蓄積・体の柔軟性の低下などが背景にあると考えられています。
ここで1つ注意があります。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった病気が隠れていたり、ぎっくり腰ではなく他の病気が原因だったりすることもあります。どうしても痛みが緩和しない、辛すぎるといった場合は、病院を受診するのがいいでしょう。
すぐ病院に行くべき危険なサイン【最初に確認】
応急処置の前に、次のサインがないかを確認してください。1つでも当てはまる場合は、自宅での対処を続けず、早めに整形外科を受診してほしいと思います。
- 足のしびれや力が入らない感覚がある
- 排尿・排便がしづらい、感覚がおかしい
- 安静にしていてもズキズキ痛み続ける
- 発熱を伴っている
- 転倒・打撲など明らかなケガの後に痛み出した(高齢の方は圧迫骨折の可能性)
これらは単なるぎっくり腰ではなく、神経の圧迫や骨折・内臓の病気が隠れているサインの可能性があるためです。
ぎっくり腰の応急処置:直後にやるべき4つの対応
応急処置1:一番楽な姿勢をとる
動けないときは、まず「一番楽だと感じる姿勢」を探すこと。これだけで大丈夫です。痛くて不安な時ほど、楽な姿勢を見つけて体と気持ちを落ち着かせることが重要です。
楽な姿勢の代表例は次の2つです。
- 仰向けの場合:足の下に枕や丸めた毛布を入れて膝を立て、股関節を軽く曲げると楽なことが多いです
- うつ伏せの場合:胸やお腹の下に枕やクッションを敷いてください(敷かないと逆に痛みが強くなる場合があります)
うつ伏せは、臨床でも圧倒的に多くの人が効果を感じている姿勢です。少し動けるようになったら、後述する「うつ伏せからの運動」につなげていきます。
コルセットがあれば一時的に固定するのも有効です。ただし効果は装着している間だけなので、長時間・長期間の使用は避けましょう。
応急処置2:冷やす(発症〜2日程度・楽に感じる場合)
夜間や休日などすぐに病院へ行けない場合は、患部を冷やしましょう。判断基準はシンプルで、冷やして楽だと感じるなら冷やす、変化がなければ無理に冷やさないです。
急に発症した痛み(捻挫・打撲など)は冷却が基本とされています。痛みがあるということは、体の内部で組織の損傷や急性の炎症反応が起こっていると考えられ、冷やすことで炎症や出血を抑え、痛みを和らげる効果が期待できるからです。
冷やすときの注意点:
- 氷やアイスノンなどを使い、1回10分程度にとどめて時間を空ける
- 直接当て続けると凍傷の危険があるため、タオルを挟む
- 冷やす期間の目安は発症から2日程度
応急処置3:温めるかどうかは「気持ち良いか」で判断
温めると血管が広がるため、発症直後は温めない方がいい、というのが原則です。ただし、ぎっくり腰は必ずしも炎症とは限らないため、「温めて気持ちが良い・楽になる」のであれば温めてもかまいません。
- 発症から3週間程度たった慢性期の痛みは、温めて血行を改善させるのが一般的です
- 患部に熱っぽさや腫れがある場合は、積極的に温めるのは避けてください
- 冷やすべきか温めるべきか迷う場合は、医師に確認しましょう
「温めるのはダメ」ではなく、症状の様子を見ながら、楽になる方を選ぶという考え方をもってほしいと思います。
応急処置4:安静にしすぎない(動ける範囲で動く)
意外に思われるかもしれませんが、極端な安静はかえって回復を遅らせます。
腰痛診療ガイドライン2019(日本整形外科学会・日本腰痛学会)でも、急性腰痛では痛みに応じて活動を続ける方が、安静を続けるよりも回復が早いことが示されています。安静期間が長すぎると予後(回復の経過)が悪くなるという調査結果もあります。
- まったく動けないうちは、無理に動く必要はありません
- 痛みが軽くなってきたら、動ける範囲で少しずつ日常生活に戻していきましょう
- 必要以上に寝て過ごすことは避けましょう
痛みを和らげる4つの運動【動けるようになってから】

少し動けるようになったら、次の運動を痛みに応じて試してみてください。痛みが強くなる場合はすぐ中止してください。
運動①:うつ伏せになる
胸やお腹の下にクッションを敷いてうつ伏せになります。多くの人がこの姿勢だけで痛みの軽減を感じます。まずは短い時間から始めて、徐々に慣らしていきましょう。
運動②:肘立ての姿勢(パピーポジション)
うつ伏せから少し上体を起こして、両肘をつきます。子犬の伏せに似ているため「パピーポジション」と呼ばれます。背筋に力を入れず、両肘で体を支えるのがコツです。痛みが強ければ中止してうつ伏せに戻し、徐々に時間を延ばします。
運動③:軽い腹筋運動
ぎっくり腰の後は運動量が減り、腹筋の筋力が低下しやすくなります。再発予防のためにも軽めの腹筋運動で筋力を回復させましょう。
やり方の注意点:
- 両足を伸ばしたままの腹筋は腰に負担がかかるためNG。仰向けで両膝を立てて行います
- 最初は両手の指先を膝に近づけながら、息を吐いて頭を上げるだけでOK
- 慣れてきたら肩甲骨が床から離れる程度まで上体を起こします
- まったく動かせない時期は、腹筋を意識した腹式呼吸だけでも構いません
運動④:腰まわりのストレッチ
しばらく動かないと筋肉の柔軟性が低下し、痛みで筋肉が緊張して関節の動きも悪くなります。仰向けで両膝を立ててそろえ、左右にゆっくり倒す運動から始めてみましょう。筋肉の異常な緊張がとれることで痛みが軽減することもあります。
ただし、筋肉の損傷でぎっくり腰が起きている場合、早い時期の無理なストレッチは逆効果です。痛みが強くなる方向には伸ばさないことを守ってください。
ぎっくり腰の予防法:なりやすい人の注意点
臨床では、介護職など腰に負担のかかる仕事の方が自宅でぎっくり腰を起こし、動けなくなるケースを実際に見てきました。日頃からの予防が何より大切です。
- 重い物を持つときは膝を曲げ、体に引き寄せてから持ち上げる
- 長時間同じ姿勢を続けず、こまめに体を動かす
- 日頃から軽い腹筋運動やストレッチで筋力・柔軟性を保つ
- 疲労をためない(疲労の蓄積はぎっくり腰の背景要因になります)
よくある質問
Q1. ぎっくり腰になったらお風呂に入ってもいいですか?
発症直後〜2日程度は、長風呂で温めることは控えめにした方が無難です。ただし温めて楽になるタイプの方もいるため、短時間の入浴で様子を見て、痛みが強くなるようならシャワーにとどめましょう。
Q2. 何日くらいで治りますか?
多くの場合、数日〜2週間程度で徐々に軽快していきます。2週間以上たっても痛みが変わらない・悪化する場合は、他の病気が隠れている可能性もあるため整形外科を受診してください。
Q3. 湿布は冷感と温感のどちらがいいですか?
発症直後は冷感タイプが一般的ですが、実際には「貼って楽に感じる方」で問題ありません。判断に迷う場合は薬局の薬剤師や医師に相談しましょう。
まとめ:まず楽な姿勢、そして動ける範囲で動く

ぎっくり腰の応急処置のポイントをまとめます。
- まず一番楽な姿勢をとる(うつ伏せ+クッション、または仰向けで膝立て)
- 冷やして楽なら発症〜2日程度は冷却、温めは「気持ち良いか」で判断
- 安静にしすぎない。痛みが軽くなったら早めに日常生活へ戻す
- 足のしびれ・排尿排便の異常・発熱・安静時も続く痛みがあればすぐ受診
すべての人に効く唯一の方法はありませんが、うつ伏せは多くの人が効果を感じている方法です。胸やお腹の下にクッションを敷くことを忘れずに、注意しながら試してみてください。
あなたのぎっくり腰が良くなることを心から願っています。
参考文献:日本整形外科学会・日本腰痛学会監修『腰痛診療ガイドライン2019』
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
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