執筆者・運営者は、理学療法士や作業療法士のリハビリテーションに関する国家資格を取得して、実際の現場で学んでます。
記事内で紹介している内容は、リハビリテーションの視点を持ったセラピストの意見です。
共感できる部分は共感して頂き、納得できる内容は納得していただけると幸いです。
また、記事の内容は自信を持って提供していますが、【内容が絶対正しい!】とは思わないでください。
世の中には、沢山の治療方法、治療スタイルや考え方があって。
個人的な意見や見解も沢山あり、どれが正しくて、どれが間違っているのか?
これは、個人の解釈によって大きく違ってきます。
ここで言えるのは、実際に試してみないとわからない。という事です。
【100%これが正しい】という意見はないと思っています。
人それぞれの見解があるので、ここで紹介している内容やお話も個人の理学療法士としての意見である事を踏まえていただきたいと思います。
そして、この記事があなたの役に立てば幸いです。
1 ALSの最新の治療を紹介する
ALSの治療は、主に投薬・薬物療法とリハビリテーションが中心になります。
これより、投薬とリハビリテーションについて述べていきます。
治療法その① 投薬・薬物コントロール
1999年に日本唯一の治療薬として、リルゾールという薬が保険適用の認可をされました。
ALSのメカニズムとして、グルタミン酸という物質が過剰に生じる事で、それが神経細胞を壊してしまう。
という事が明らかにされています。
このリルゾールは、そのグルタミン酸の毒性を和らげ、運動ニューロンを保護するという役割を持っています。
運動ニューロンが保護される事で、神経は正常な伝達作業を行えるようになるであろう。という考えです。
リルゾールをALSの患者さんに投与したところ、生存期間や人口呼吸器の装着までの期間を延長させた。
という結果も実際にあります。
原因不明だが、グルタミン酸が過剰に分泌されてしまっている。
↓
リルゾールによって、グルタミン酸の力を弱らせて、神経伝達を正常にさせる
↓
その結果、症状が弱まるのではないか・・・・・?
という治療目的
2015年には、これまで脳梗塞の治療薬として使われていたエダラボンという薬が、ALSの機能障害に対し進行を抑制する作用があると認可されました。
その翌年の2016年には、東京大学グループがAMPA型グルタミン酸受容体の拮抗薬として、ペランパネルというてんかん薬がALSに効果があると発表し、2017年に日本で治験が開始されました。
グルタミン酸によるシナプス後受容体の活性化を阻害し、神経の過剰な興奮を抑制させ、運動ニューロンを守る働きがあると認められています。
マウスへ投与した実験において、運動機能の低下・ニューロンの変性や脱落が食い止められる。
など症状の進行を抑えられたという結果が出ています。
このように、薬物療法の分野において研究や解明がすすんでいるところです。
治療法その② リハビリテーション
リハビリテーションは、主に生活動作の練習が中心になると言えます。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は進行性の難病であり、原因不明とされています。
日常生活動作が難しくなってきてしまう現実があります。
その難しくなってきている、日常生活動作の練習を行う事が中心になります。
進行の度合いはそれぞれなので、できる動作、難しくなってきている動作を確認しながら、できるように練習していきます。
2 ALSの治療における3つの要素を紹介
ALSは根治が難しい進行性の疾患とされています。
根治をさせる為に医療は常に進化していますが、追い付いていないのが現状です。
この項目では、患者さんがALS(筋萎縮性側索硬化症)と付き合っていくうえで、大切な3つのことをお伝えしたいと思います。
その① QOLの向上・維持を目指す
その② こころのケアを怠らない、こころを豊かにする努力をする
その③ 進行を進めない為のリハビリの意識
といった3点を述べていきます。
参考にしてほしいと思います。
その① QOLの維持・向上を目指す
QOLとはクオリティオブライフ、生活の質であり。
患者さんのそれまでの生活歴を踏まえて、出来るだけ生活を満足できる状態を維持しましょう。
という意識の事を指しています。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)になってしまったのに、QOLの向上・維持を目指せ・・・・なんて、何を言っているんだ。
と思うかもしれません。
しかし、QOLを維持・向上させる気持ちを持つ事は、大事だと思うのでお伝えしたいと思います。
やはり、意識する事は大切です。
生活の質は第3者が決めるものではなくて、自分が決める事です。
ALSは進行によって、徐々に体が自力では動かしにくくなってしまうのが事実にあります。
苦しいし、辛いなど感じるのが当然でしょう。
何故、ALSになってしまったのか・・・・このように思う人もいるでしょう。
ただ、現実を変える事もできないので、今の状況から何を、どのようにしていかなくてはいけないのか?
これが重要であると思うのです。
なので、自由が奪われていく中で、患者さんが何をしたいか、どのようにありたいか。
と思うことが何より大切だと思っています。
その中で、どのようにして、生活質(QOL)を向上・維持していかなくてはいけないのか?
ここを考えていく必要があると思っています。
そして、治療者はその気持ちに寄り添いサポートしていくということが必要です。
【身体的な面】(疾患に対する知識、医療ケアのインフォームドコンセント、リハビリの実施など)
【精神・心理的な面】(不安や鬱やストレスなどのフォロー)
【環境面】(症状の進行に合わせた適切な環境調整や福祉用具の導入)
【制度の面】(手帳の申請や認定、年金など)
といった多方面からのアプローチが必要で、各専門職の密な連携が不可欠です。
このように、治療者はできるかぎりの事を全力で支える必要があります。
そして、患者さんと一緒に生活の質を維持・向上させることを目指す。
このように取り組んでいく事が必要だと思ってます。
その② こころのケアを怠らない、こころを豊かにする努力をする
ALSの診断を受けること、症状が進行していくことによって受ける精神・心理的打撃は計り知れません。
- どうして自分がこの病気にかかったのか?
- この先どうなるのか?
- どうすればいいのか?
など、不安や恐怖を感じることでしょう。
病気を受容できるまでには憤りや怒りなど、精神的に不安定になるケースが多くみられます。
受容出来ても、症状が進行していくにつれて出来ないことが増えてくるので、自尊心の喪失から鬱状態になってしまう人もいます。
また、今までの学業や仕事が出来なくなっていくことによる社会的役割の喪失もあります。
家庭内においても、金銭面における将来の不安や、これまで担っていた父または母などの役割の喪失もある人もいます。
このように患者さんは喪失体験の連続に陥ってしまいやすい事実もあります。
ALSと診断されてしまうと、だれもがこのように感じるのは当然な部分もあると思います。
診断や告知に関しては慎重に行われるべきで、場所・時間・家族の有無・情報量など配慮の必要があるし。
治療方針を決定実施する時も、インフォームドコンセントが十分に行われることが望ましいです。
そういった中で、事実を受け止めて、治療に対して意欲を持てるように促していく必要があるのです。
心のケアの努力は常に必要です。
無理しない範囲で努力していけるといいでしょう。
その③ 進行を進めない為のリハビリの意識
ALSという疾患において、リハビリは非常に重要な部分となります。
日常生活動作の毎日における繰り返しが、立派なリハビリになっています。
朝起きてから夜眠りにつくまで、日常生活動作があります。
- ご飯を食べる
- トイレ行く
- 顔を洗う
- 歯磨きをする
- 着替える
- お風呂に入る
など。
ご飯を食べることを例のひとつにしても、
- 箸を使う
- お茶碗を持つ
- 口へ運ぶ
- 咀嚼し飲み込む
- おかずの食べる順序を考える
などなど、数多くの動作から成り立っています。
これがリハビリとなります。
ALSの患者さんには、何気なく行っている日常動作が大切になります。
頭も体も使っているし、手を動かす事など、ひとつひとつを大切に、出来るだけ自分の力で行う事がリハビリになります。
また、介助者のかたも、
「やってあげたほうがいいんじゃないのか?」
「やってあげたほうが早いわ」
とならず。
出来ることは極力見守り、適切なサポートをしていく必要があります。
日常が進行をさせない為のリハビリとなります。
このような意識を持ってほしいなと思います。
3 リハビリは進行を進めない事が最大の目的
ALSにおけるリハビリの目的は、いかに残存機能を活かしていけるのか?がポイントになります。
使わなさすぎも使いすぎも良くありません。
体をまったく動かさないでいると
- 筋力の低下
- 関節の拘縮
- 心肺機能の低下
など全身の廃用性症候群を招いてしまいます。
かといって。
動かしすぎても疲労・骨折・筋肉の炎症などを起こす可能性があるので、運動は状態に合わせて適度に行うのが大切です。
運動のやり方や負荷のかけ方などは、専門職と相談したうえで決定します。
環境整備も大変重要です。
- 手すりの位置や形状
- 椅子の高さ
- 家具の位置
- 段差の解消
など。
どうやったら動きやすいか?
スムーズに動けるか?
患者さんが使えるものは何か?
という視点から調整します。
ちょっとした工夫で、
- 立ち上がりがスムーズに出来たり
- うまくスプーンを使えたり
など。
患者さんが出来ることがぐんと広がります。
そのように日常生活上で出来ることを増やしていくと、残存機能を上手く活かしたリハビリになるというわけです。
4 楽しみは、生きる原動力となると思う。
ここでは、私が実際に患者さんとして、担当したお話しをしたいと思います。
ALSのかなり症状が進行した患者さんのお話です。
体を自由に動かずことが出来ず、基本的に臥床の状態で身の回りのことは全介助に近い状況でした。
(全介助とは、自分で寝返りや起き上がる事もできないくらい、筋力や体力が下がってしまっている状態の事をいいます。)
この患者さんは、発症前から読書や自分で文章を書くことが好きだったとのことでした。
発症をきっかけにパソコンで日記を付けたり手紙を書いたりしていましたが、徐々に手を使ってのパソコン操作が困難になっていきました。
この患者さんにとって書くという行為は、自分の思いを発する大切なことつまり生きがいであったわけです。
外部とのコミュニケーション手段でもあったことでしょう。
それが出来なくなると楽しみや張り合いが無くなってしまう。
どうにか書くことを続けていただきたいと思ったので、比較的動かしやすい足趾、また、口唇を使った入力装置を導入しました。
そのおかげで、少しだけの間、この患者さんは引き続き日記や手紙を書くことを続ける事が出来ました。
楽しみがあるということは、闘病中の患者さんの大きな支えや生きる原動力になると思った出来事です。
今回の体験が私の価値観を変えるきっかけともなりました。
簡単なお話にはなりますが、こういった出来事もあるので、諦めずに工夫をしていけるといいかなと思う次第です。
参考にしてもらえたら嬉しいです。
5 ALSの認知が世間に広がる事によって、得られるメリット
患者さんとその家族にとって、ALSの認知が広がることによって得られるメリットは多くあります。
ALSの認知が広がると、
- ALSにおける支援者が多くなって、症状改善のための研究が進む
- 当事者の孤独感が軽減する
- 仲間が増える、感情を分散させることができる。
- 難病について、助け合える社会になる。
などがメリットとして、考えられるのではないでしょうか。
ALSは発症率が少なく、難病でメカニズムがどちらかというと一般のかたには理解されづらい疾患でしょう。
ですので、正しく認知され支援者が出てくることによって、当事者の孤独感がやわらぎ、大きな助けとなると思います。
また、ALS以外にも、難病の疾患は数多くあります。
その疾患についても関心を向ける大きな一歩になる可能性もあると思うのです。
このように、分け隔て無く難病疾患を患ってしまった人が世の中には沢山いるという事を知っているだけでも、何かしら助け合える社会になっていくのではないかなあと思っています。
少しでも世の中が助け合える社会にしていきたいですね。
6 まとめ:ALSの治療は投薬とリハビリが中心、進行を進めない為に頑張ろう
いかがでしょうか?
今回はALSの治療をテーマにしてみました。
特定難病疾患の一つではあり、根治は難しいと言われています。
それでも、リハビリや投薬治療を行って、症状の進行を遅らせる。
という事が目的になります。
根治できないからあきらめるのではなく、
『症状とどうやって向き合っていくのか?』
この心持が大切になってくるのかと思っています。
言葉でいうのは、簡単だし、当事者でないとわからない気持ちは沢山あると思います。
しかし、現実はALSの完治は見つかっておりません。
なので、現状からどのようにして、人生を過ごしていくのか?
このような思考にするしかないと思う訳です。
そんな中で、ALSになってしまっても、楽しく人生を過ごしている人もいるのが事実です。
私達は、ALS患者様の気持を100%わかる事はできませんが、100%の気持で理解しようとする事はできます。
なので、治療者、セラピストとしては、100%の気持で接していきたいなぁと思う次第です。
ALSの認知が世間に広がれば嬉しいです。
本日も最後までありがとうございました。
執筆者:mamotteライター 作業療法士 ナカガワ
追記・編集:mamotte運営管理者 理学療法士 平林
・ALS(筋萎縮性側索硬化症)について、原因や症状を細かく紹介しています
・筋ジストロフィーについて、紹介しています。
参考にしてみてください。
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mamotteライターで作業療法士のナカガワです。
今回は、ALSについて記事にしていきます。
その中でも、【ALSの治療】をテーマにしました。
この記事を読めば
◎ ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療について理解できて、リハビリに役立てる事ができると思います。
最後まで読んで、参考にしてもらえたら嬉しいです。
本日もよろしくお願いいたします。