脊柱管狭窄症の運動・ストレッチ|楽な方向の見つけ方を理学療法士が解説

脊柱管狭窄症には運動療法が必要

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脊柱管狭窄症の症状をやわらげるには、適度な運動やストレッチ、歩くことなど「体を動かすこと」が大切だと理学療法士の立場からお伝えしたいです。

ただし、同じ脊柱管狭窄症でも状態は人それぞれで、「この運動をすれば誰でも楽になる」という方法はありません。

ポイントは、背中を丸める・反らす・横に倒す(側屈)のどの方向が楽になるのかを自分の症状を基準に確かめ、足のしびれや痛みが強くなる種目は避けることです。

そして、長時間やるより、風呂上がりや寝る前の5分を毎日続ける方が効果を維持しやすいです。

この記事では、脊柱管狭窄症の運動療法がすすめられる理由、楽な方向の見つけ方、比較的安全に行いやすい種目と手順、すぐに受診すべきサインまでをまとめました。

脊柱管狭窄症に運動が大切とされる理由

脊柱管狭窄症に運動が大切とされるのは、薬で痛みを抑えるだけでは神経が圧迫されている状態そのものへの対処にならず、運動で筋力や柔軟性を保つことが症状の緩和と悪化予防の両方につながると考えられるからです。

日本整形外科学会監修『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021』でも、運動療法を含む保存療法は治療の選択肢の一つとして位置づけられています。

理由①:薬だけでは圧迫そのものへの対処にならない

歩くたびに足が痛んだりしびれたりすると、痛み止めを飲んで安静にしておけば、その場の痛みはしのげます。

しかし、痛み止めは一時的に痛みを緩和する対症療法であって、神経が圧迫されている状態への対処にはなりません。

運動療法は、身体の状態を評価し、その人の問題点に合わせた運動で症状の緩和・軽減を目指す方法です。

単なる運動ではなく、あなたの状態に合わせて「何を動かし、何を避けるか」を組み立てるところに意味があります。

理由②:習慣化すると悪化の予防につながりやすい

運動療法には症状を改善する積極的な意味だけでなく、悪化を防ぎ、長期にわたって状態を維持するという意味もあります。

脊柱管狭窄症は年齢を重ねるにつれて進行しやすいことが多いため、長く続けられる運動は相性のよい対策といえます。

自宅で行う自主的な運動も、運動療法の要素を取り入れた自主トレと捉えてよいと思います(厳密な運動療法は医師の処方のもとで行われるものなので、その点は区別してください)。

理由③:筋肉が固くなるのを防げる

脊柱管狭窄症のように神経に影響が及ぶ状態では、筋肉の突っ張り(緊張の亢進、短縮、柔軟性の低下)が起こることがしばしばあります。

そのまま放置すると筋肉は短く固くなっていきます。

これを予防するという意味でも、ストレッチで関節の可動域を維持しておくことには十分な意味があります。

筆者自身もストレッチをさぼったために左足の筋肉が固くなってしまった経験があり、即効性は感じにくくても有益な対策だと感じています。

脊柱管狭窄症にストレッチは効くのか

脊柱管狭窄症にストレッチが効くかどうかは、正直なところ「やってみないとわからない」が理学療法士としての本音で、改善する人もいれば変化を感じない人もいます。

改善が期待できるケース

人は年齢を重ねると自然に姿勢が崩れ、体の柔軟性も落ちやすくなります。

脊柱管狭窄症を発症したことで柔軟性が低下し、姿勢が悪化することも多々あります。

脊柱管狭窄症の症状は姿勢と関連があり、姿勢を変えることで神経への圧迫が減って症状が軽くなることがあります。

ストレッチで柔軟性を改善し、良い姿勢を保てるようにすれば、神経への圧迫が減って症状の改善が期待できます。

また、見た目の姿勢は変わらなくても、背骨の椎骨間に余裕ができることで神経への圧迫力が減ることも期待できます。

さらに、いくつかの種目を試す過程で「楽な姿勢」が見つかる、という副産物もあります。

効果を感じにくいケース

ストレッチは万能ではありません。

背骨と神経の通り道の狭窄が重度の場合は、効果が薄くなることも当然あります。

良い姿勢を意識するだけでは思うように症状が変わらないこともあり、こればかりは個人差が大きいところです。

ただし、それでもストレッチの意味がないわけではなく、関節の可動域を維持するという点ではやらないよりやった方がよいと考えています。

即効性を期待しすぎない方がよい理由

ストレッチは1日や2日で結果が出る方法ではなく、時間をかけて継続していく必要があります。

期待すればするほど、良くならなかったときのショックが大きく、精神的にも悪い方向へ行ってしまう可能性があります。

手術をしない場合、3ヶ月程度を目安にされることが多いので、数ヶ月は様子を見ながら続けてみてください。

その間に悪化するようであれば次の方法(手術など)を検討する段階になりますし、症状が維持できていれば「効果あり」と捉えることもできます。

なお、手術が必要かどうかは医師が判断することですので、自己判断せず相談してください。

脊柱管狭窄症のストレッチは「楽な方向」を探すことから

脊柱管狭窄症のストレッチは、腰を「前に曲げる(丸める)」「後ろに反らす」「横に倒す(左右)」の4つの動作のうち、どの方向が自分にとって一番楽かを見つけることから始めてください。

教科書的には「脊柱管狭窄症は背中を丸めましょう」と言われますが、現場の実感としては丸めてもあまり変化がない人もいます。

教科書通りではなく、あなたが今感じている症状がどう変化するかを基準にしてください。

どの種目も、痛みや症状が悪化すると感じたらすぐに中止します。

背中を丸める方向のストレッチ

背中を丸める方向の運動は、統計的には安全なことが多いですが、全員に当てはまるわけではありません。

仰向けで両膝を抱え込み、背中の下側をゆっくり伸ばす感じで行います。

片膝ずつ抱え込む方法も試してみましょう。

ゆっくり時間をかけて行い、痛みなどの症状があるときはすぐに中止してください。

背中を反らす方向のストレッチ

脊柱管狭窄症では背中を反らす運動は適さないことが多いですが、丸めるのがだめな場合はうつ伏せで寝てみてください。

それで症状が軽くなるなら、反らす方向のストレッチが合っている可能性があります(確率は低めです)。

その場合は少し腰を反らせるストレッチを試してもよいでしょう。

ただし、症状が少しでも悪化するようならすぐに中止してください。

横に倒す・ひねるストレッチ

上半身を横に倒す側屈の運動は、どちらかの方向で症状が楽になることがあります。

軽く体幹を左右に倒してみて、楽になる方向があれば側屈のストレッチを加えてみてください。

仰向けで両膝を立て、ゆっくりひねるように両足を左右に倒す「腰ひねり」も、強い痛みが出ない範囲で行えます。

左右差を確認しながら行うのがポイントです。

脊柱管狭窄症で比較的安全に行いやすい運動

脊柱管狭窄症で比較的安全に行いやすいのは、腰への影響が少ない下肢の運動で、「運動中に足へ走るような痛みやしびれが出るかどうか」を見分けの基準にしてください。

神経症状が悪化する運動は避けるようにします。

友人や本ですすめられた体操があなたに合うとは限らないので、実際にやって確かめることが欠かせません。

下肢の運動(足首・かかと・膝)

  • 足首の運動(寝た姿勢でもできます。つま先をしっかり上下に動かすのがポイント)
  • 下肢の挙上(膝を伸ばして片足を上げる。しびれが悪化する場合は中止し、症状が出ない範囲で少しずつ上げる)
  • かかとの上げ下ろし(立位で行う)
  • 膝の屈伸運動

下肢の筋肉を動かすと、筋肉の収縮と弛緩がポンプのように働いて血流を良くすることができます(マッスルポンピングアクション)。

太ももには大腿四頭筋など大きな筋群があり「第二の心臓」とも呼ばれます。

スクワット動作や椅子からの立ち上がり動作も、痛みやしびれが出ない範囲でよい方法です。

ふくらはぎはタオルなどを使って、ゆっくり時間をかけて伸ばしてみましょう。

腹筋の運動

腹筋は起き上がりのときに大切な筋で、弱くなると寝返りや起き上がりがしにくくなります。

重い物を持ち上げるときに腹圧を高める働きもあります。

  1. 両手の先を膝につけるつもりで、両膝を曲げる
  2. 息を吐きながらゆっくりと頭を上げる
  3. 上がったところで1、2、3と数える
  4. ゆっくり下ろす

無理をする必要はありません。できる範囲で10回程度を目標に行いましょう。

背筋の運動

安全で簡単に行える腰上げから始めてみましょう。

  1. 仰向けで膝を立て、腰をゆっくり上げて1、2、3と数える
  2. ゆっくり下げる(両手で床を強く押さえないように注意)

20回程度を目標に行い、動作で痛みなどが出る場合は中止してください。

応用編として、四つ這いの姿勢で対角線上の手足を交互に上げる方法もあります。

バランスが不安定でふらつく場合は、四つ這いではなく腹ばいで行うとよいでしょう。

脊柱管狭窄症の運動を続けるための3つの対策

脊柱管狭窄症の運動を効果につなげるには、「良い姿勢の意識」「自分に合った運動の選択」「毎日の継続」の3つをセットで考えることが大切です。

対策①:日常生活で良い姿勢を意識する

脊柱管狭窄症の原因の一つには姿勢の悪さが関係しています。

姿勢が悪いと腰椎や椎間板への負担が増え、組織の変性が起こりやすくなります。

逆に言えば、良い姿勢にするだけで腰への負担が減り、変性・変形のスピードを抑えることが期待できます。

すでに脊柱管が狭窄している場合は、姿勢によって神経への圧迫具合が変わるという特徴があるため、「腰への負担が少ない姿勢」だけでなく「神経への圧迫が少ない姿勢」を保つ必要も出てきます。

理想的な背骨は自然な彎曲を持ち、腰の部分は前方に凸になりますが、脊柱管狭窄症を発症している場合は「まっすぐな姿勢」が良いとは限りません。

基本を理解したうえで、自分の中で最も症状が出にくい姿勢を探るという理解でよいと思います。

なお、横座りは背骨が側弯するのでおすすめしません(例外的にその座り方で楽になるなら問題ありません)。

対策②:自分に合った運動を選ぶ

脊柱管狭窄症は同じ診断名でも人によって状態が違うので、適切な運動内容も人それぞれです。

「脊柱管狭窄症にはこの方法が効く!」という見出しを目にしても、どんな人にも100%効果のある方法があるわけではありません。

実際にやってみて、症状がどう変化するかを確認することが、合う運動を見つける唯一の方法だと思ってください。

対策③:短時間でも毎日続ける

ストレッチや運動の効果は、短期間集中してやっても、その後やらなければ維持できません。

むしろ短時間であっても定期的に続けることで、効果を維持できます。

長時間行う必要はないので、風呂上がりに5分、寝る前に5分など、習慣にしてみてください。

筋肉も短期的にはつきませんから、少しずつ継続することが必要です。

運動をやめてすぐ病院に行くべきサイン

次のような症状がある場合は、運動をいったん中止し、すぐに医療機関を受診してください。

  • 足のしびれや脱力(力が入らない感じ)が進んでいく
  • 排尿・排便の異常(尿が出にくい、漏れる、便のコントロールが効かないなど、馬尾症状と呼ばれるもの)
  • 安静にしていても続く痛み
  • 発熱を伴う腰や足の痛み
  • 転倒した、または転倒しそうになることが増えた

脊柱管狭窄症が重度の場合は、神経を強く圧迫して強い歩行障害や排泄障害を起こすことも事実で、そのような場合は手術による治療が必要になることもあります。

手術が必要かどうかは医師の判断になりますので、上記のサインがあれば自己判断で運動を続けず、相談してください。

脊柱管狭窄症を必要以上に怖がらなくてよい理由

脊柱管狭窄症という名称は重い病気に聞こえますが、脊柱管の狭窄自体は年齢を重ねれば誰にでも起こりうることで、狭窄があっても症状を感じない人も多いです。

脊柱管には余裕があり、神経も多少の圧迫には耐えられるため、MRIで脊柱管狭窄症が見つかることは珍しくありません。

なので、必要以上に怖がる必要はありません。

ただし、前の見出しで述べたようなリスクも知ったうえで、正しい知識を持っておいてほしいと思います。

専門家に相談しながら運動を進めるのがおすすめ

運動療法は自分で行うこともできますが、どの運動が適切か、どこに注意すべきかには専門的な知識が必要な場合も多いので、できるだけ専門家に相談して適切な内容を体験することをおすすめします。

脊柱管狭窄症では、下肢の筋力低下や神経症状が生じている可能性があります。

リハビリとして歩行訓練を行う際には、その人に最も合った歩行補助具(杖や歩行器など)を選び、高さを細かく調整して歩きやすさや歩行距離の向上を追求したりもします。

間違った評価やプログラムを実施すると危険な場合もあります。

リハビリで何をするのか、自己管理をどう身につけるのかについては、脊柱管狭窄症のリハビリで症状緩和を目指す方法で詳しく解説しています。

脊柱管狭窄症の症状や原因、治療の全体像は脊柱管狭窄症のまとめ記事も参考にしてください。

よくある質問

Q. 脊柱管狭窄症は背中を丸めるストレッチをすれば必ず楽になりますか?

必ずではありません。教科書的には丸める方向がすすめられますが、実際には変化がない人もいます。丸める・反らす・側屈のそれぞれを試し、自分の症状が楽になる方向を基準に選んでください。悪化する種目はすぐに中止します。

Q. 運動やストレッチはどのくらい続ければ効果がわかりますか?

1日や2日で判断できるものではありません。手術をしない場合は3ヶ月程度を目安にされることが多いので、数ヶ月は継続しながら様子を見てください。症状が維持できていれば効果ありと捉えることもできます。悪化するようなら医師に相談してください。

Q. 本やテレビで紹介された体操を試しても大丈夫ですか?

腰への影響が少ない下肢の運動などは安全に行えることも多いですが、どんな人にも合う方法はありません。運動中に足へ走るような痛みやしびれが出るなら、その運動はあなたに合っていない可能性が高いので中止してください。

まとめ

  • 脊柱管狭窄症には、薬で痛みをしのぐだけでなく、運動やストレッチで筋力と柔軟性を保つことが症状の緩和と悪化予防につながると考えられる
  • ストレッチが効くかどうかは「やってみないとわからない」。改善が期待できる人もいれば、重度の狭窄では効果が薄い人もいる
  • 丸める・反らす・側屈(左右)のうち、自分の症状が楽になる方向を基準に種目を選ぶ
  • 足首・かかと・膝など下肢の運動は比較的安全に行いやすい。腹筋・背筋も無理のない回数で
  • 足へ走る痛みやしびれが出る運動は避け、短時間でも毎日続ける
  • しびれや脱力の進行、排尿排便の異常、安静時の痛み、発熱、転倒があればすぐ受診。手術の要否は医師が判断する
  • 適切な運動内容は人それぞれなので、できるだけ専門家に相談しながら進める

参考文献

  • 日本整形外科学会監修『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021』

※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

この記事を書いた人・編集した人
理学療法士 イワモト
執筆:理学療法士(PT)イワモト
1990年から救急病院で理学療法業務を開始。脳血管疾患・整形外科疾患のリハビリを中心に、特別養護老人ホームでの機能訓練指導員・介護業務も経験。臨床経験30年以上。
理学療法士 平林康平
編集・運営:理学療法士(PT)平林康平
2009年理学療法士免許取得、臨床経験17年以上。整形外科クリニック・老健・デイサービス・訪問リハ・障害福祉分野で勤務。腰痛・首痛・しびれなど痛みの治療が専門。マッケンジー法 Credentialed MDT(国際認定)。
mamotteの記事は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の国家資格を持つリハビリテーションの専門職のみが執筆・編集しています。臨床での経験に基づく内容ですが、治療法の感じ方には個人差があり「唯一正しい方法」は存在しません。一人の専門職の意見として、ご自身の体の反応を確かめながら参考にしてください。 ▶ 執筆者プロフィール・国家資格証はこちら
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mamotte運営者。理学療法士(2009年免許取得・臨床経験17年以上)、マッケンジー法 Credentialed MDT認定。整形外科クリニック・老健・デイサービス・訪問リハ・障害福祉分野で勤務し、腰痛・首痛・しびれなど痛みの治療を専門としています。mamotteの記事は理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の国家資格者のみが執筆・編集しています。

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