椎間板ヘルニアでも、痛みが落ち着いていれば筋トレはしてOKです。
鍛えたいのは腹筋・背筋・殿筋・腸腰筋の4つ。とくにインナーマッスル(体幹)を意識したトレーニングが中心になります。
一方で、両足を伸ばして上半身を起こす腹筋運動と、うつ伏せで足を押さえて上半身を反らす背筋運動は、腰椎や椎間板に大きな負荷がかかるためNGです。
この記事では、椎間板ヘルニアのときにやっていい筋トレの種目と手順、やってはいけない動き、すぐに受診すべきサインを理学療法士が解説します。
なお、筋トレを始める前に、現在の症状で運動をしてよい状態かどうかを医師や理学療法士に相談しておくと安心です。
椎間板ヘルニアでも筋トレはしていいのか?
痛みが落ち着いて比較的動けるのであれば、痛みが出ない範囲で筋トレはOKで、むしろ行ったほうがよいと考えています。
ある程度の筋力をつけておくことは、良い姿勢を保つために必要だからです。
ただし、ヘルニアの症状によって痛みが強いときは、我慢してまで行う必要はありません。「痛みが出ない程度で行う」という意識が大切です。
また、むやみに行う腹筋や背筋のトレーニングはNGになる場合もあります。正しい姿勢で、腰に負担のかからない方法を学んだうえで取り組みましょう。正しい方法で行えば筋トレで悪化することは少なく、筋トレの前後に腰の軽いストレッチを行うと、より取り組みやすくなります。基本的な筋トレは行ってOKなので、怖がりすぎる必要はありません。
椎間板ヘルニアに対して「筋トレは必要ない」という考え方もあります。NGな筋トレで逆に悪化させる危険があるためです。しかし、症状が出ると安静を余儀なくされ、全力を出せない期間が続くため、筋力低下や気づかない筋力のアンバランスが生じやすくなります。だからこそ、安全な方法を選んだうえでの筋トレは必要だと感じています。
椎間板ヘルニアで運動が勧められる理由は、椎間板ヘルニアは運動すべき理由でも詳しく解説しています。

椎間板ヘルニアに筋トレが有効な理由
筋トレが有効な一番の理由は、筋力がつくと良い姿勢を取りやすくなるからです。
脊柱は筋力によって安定した姿勢を保っています。良い姿勢を保つには筋力が必要で、逆に悪い姿勢が続くと筋力は低下します。
人は誰でも無意識のうちに楽な姿勢・悪い姿勢を取りがちなので、次第に筋力低下が起きやすくなります。こうした悪い姿勢は、椎間板ヘルニアを悪化させる原因と言えます。
悪い姿勢の悪循環
- 悪い姿勢になってしまう
- 筋力が低下する
- 腰痛・椎間板ヘルニアになってしまう
この悪循環を断ち切るためにも、筋力の強化は有効です。
また、力仕事をするときはお腹と背中にしっかり力を入れて腹圧(お腹の中の圧力)を高めましょう。背骨が安定し、腰に負担をかけずに重い物を持ち上げられるようになります。
まとめると、
- 良い姿勢を取ることが椎間板ヘルニアの改善・予防に必要
- 良い姿勢には腹筋・背筋といった体幹筋が必要
ということになります。


インナーマッスルとアウターマッスルの違い
インナーマッスルとは、体の内側・深いところにある筋(深層筋)の総称で、外側にある筋はアウターマッスルといいます。
- インナーマッスル: 姿勢の保持や細かい動きの調節に働き、アウターマッスルの補助的な役割をします。腹筋の内側や背骨の内側にある、骨の周りについている細く小さな筋肉と捉えてください。
- アウターマッスル: 運動のときに主に働く筋(主動作筋)で、大きな動きを担当します。体の表面についている筋肉で、負荷の強い筋トレで主に鍛えられるのはこちらといわれています。
負荷の強い筋トレでインナーマッスルがまったく鍛えられないわけではありませんが、両者のバランスをよくするためにも、インナーマッスルを意識したトレーニングが必要です。とくに椎間板ヘルニアの予防・改善にはインナーマッスルが重要になります。



椎間板ヘルニアに効果的な筋トレ4種(腹筋・背筋・殿筋・腸腰筋)
椎間板ヘルニアで鍛えたいのは、腹筋・背筋・殿筋・腸腰筋の4つで、なかでも体幹のインナーマッスルがトレーニングの中心になります。
体幹の筋は腰部と深く関係しており、姿勢の保持や運動の調整など重要な働きをします。
筋トレは実際に効果があるかどうか、やってみないとわかりません。無理をしすぎないように、やりやすい方法から始めてみてください。
腹筋①:腹式呼吸(安全性が高く早期から可能)
まずは安全性の高い腹式呼吸からです。ヘルニア発症後、比較的早期から行うことができます。
お腹の深部にある腹横筋や横隔膜をしっかりと動かします。最初は仰向けに寝た姿勢で行いましょう。椎間板へのストレスが少なく筋がリラックスする状態なので、両膝の下に大きな枕を入れるか、両足を椅子などの上にのせるとさらに楽になります。

やり方
- 両膝は曲げて立てておきます。
- この姿勢で、息をゆっくり吐きながらお腹をへこませていきます。お腹にしっかりと力を入れ、息を吐ききったところで2秒ほど保持します。
- 力を抜いて息を吸います。自然と空気が入ってきます。
お腹の上に手をおいて、お腹がしっかり動いているか確認しながら行うとよいでしょう。
補足: ヘルニアの症状が落ち着いて通常の生活ができるようになったら、1〜3を連続して10回程度から行ってみましょう。この腹式呼吸は座位や立位、歩行時に行うこともできます。
腹筋②:クランチ(体を全部起こさない腹筋)
やり方
- 先ほどと同じく、両膝を立てた仰向けになります。
- 息を吐きながらゆっくりと頭を上げます。手は胸の上で組んでおきましょう。
- ゆっくりと下ろします。お腹にしっかり力が入っていることを確認してから、息を吸います。
補足: 1〜3を10回程度から始めましょう。これはクランチという腹筋のトレーニングです。慣れてきたら、肩と背中の上部が床から離れるくらいまで起こします。よくある腹筋運動のように体をすべて起こす必要はありません。
背筋①:うつ伏せで対角の手足を上げる
背筋は背中に作用するため、やり方次第では腰痛を少し強くしてしまうかもしれません。様子を見ながら、無理をしないように少しずつ行ってください。
やり方
- ばんざいの姿勢(腕が両耳につくような姿勢)でうつ伏せに寝ます。
- 右手と左足を同時に上げます(数秒キープ。最初は数cmでよいです)。
- 右手と左足を下ろします(脊柱の筋に力が入るのを意識する)。
1〜3ができたら、2を左手と右足に変えて同じように行います。
背筋②:うつ伏せで両手両足を上げる
やり方
- ばんざいの姿勢でうつ伏せに寝ます。
- 両手と両足を同時に持ち上げます(反動をつけないようにゆっくりと上げます)。
- 数秒キープした後で下ろします(背中に力が入っているのを意識します)。
補足: 左右5回ずつ程度から始めましょう。これで痛みが出るようであれば中止して、また時間をおいて試してみてください。楽な変法として、背筋を伸ばして椅子に腰かけ、両腕をゆっくり上げ下ろしする方法もあります。
背筋③:四つ這いで手足を上げる
やり方
- 四つ這いになります。
- 右手をまっすぐ上に上げます(肩の高さ程度でよいです。数秒キープしたら下ろします)。
- 四つ這いに戻り、左手をまっすぐ上に上げます(同様に数秒キープして下ろします)。
- 四つ這いに戻り、右足を伸ばして上げます(できれば腰の高さまで上げて、キープしたら下ろします)。
- 四つ這いに戻り、左足を伸ばして上げます(同様に行います)。
- 四つ這いに戻り、右手と左足を同時に上げます(無理のない程度から行い、ゆっくりと下ろします)。
- 四つ這いに戻り、左手と右足を同時に上げます(数秒キープした後、ゆっくり下ろします)。
これらの動きを左右5回ずつから始めましょう。四つ這いで足を後ろに伸ばす動きは、殿筋の運動にもなります。
背筋④:猫のポーズ(脊柱の運動)
あわせて、できる範囲での脊柱の運動も有効です。四つ這いで背中を丸めたり反らしたりする方法は、比較的負担が少ないです。
やり方
- 四つ這いで、まず少し腹筋に力を入れながら背中を丸めます(このとき息を吐きます)。
- ネコのように腹筋を緩めて背中を反らせます(息を吸いながら行います)。
これを10回程度繰り返します。痛みがある場合は無理しないでください。
殿筋①:お尻上げ
殿筋(おしりの筋)は、次に紹介する腸腰筋と同時に働いて、姿勢の保持に重要な役割を果たします。
やり方
- 両膝を立てて仰向けに寝ます。
- ゆっくりとおしりを持ち上げていきます(背中と大腿が一直線になる程度まで上げますが、無理せず少し上げる程度から始めてください)。
- おしりを上げた位置で数秒キープして、ゆっくりと下ろします。
この運動は背筋のトレーニングにもなります。10回程度から始めましょう。

殿筋②:片足を上げたままのお尻上げ
お尻上げを少しアレンジした方法です。
やり方
- 両膝を立てた仰向けになります。
- 右膝を伸ばして、左膝の高さまで足を上げます(そのままキープ)。
- 右足は上げたまま、おしりを上げていきます(上げたら数秒キープします)。
- ゆっくりおしりと右足を下ろします。
反対側も同様に行います。左右5回ずつから始めましょう。
腸腰筋①:仰向けで膝を胸に引き寄せる
腸腰筋のうち大腰筋は腰椎に直接ついていて、姿勢の保持などに重要な働きをします。
やり方
- 両膝を立てた状態で仰向けになります。
- 右膝を軽く曲げたまま右足を持ち上げ、胸の方にゆっくり引き寄せていきます。
- 右膝は曲げたままゆっくり下ろして、右足を床につけます。
左側でも同様に行います。動作の間、背中が反らないように腹筋にも力を入れておきましょう。左右5回ずつから始めましょう。
腸腰筋②:椅子に座って足を持ち上げる
やり方
- 右膝を曲げたまま右足を10cm程度持ち上げます(上半身は真っすぐに保ちます)。
- 数秒キープした後、ゆっくり下ろします。
左側も同様に行います。さらに筋力を上げたい場合は、膝を持ち上げた状態で手で膝を下に押しながらそのままキープします。
椎間板ヘルニアでやってはいけないNGな筋トレ
一般的に良くないといわれているのは、「両足を伸ばして上半身を起こす腹筋運動」と「うつ伏せで足を押さえて上半身を反らす背筋運動」の2つです。
NG①:両足を伸ばして上半身を起こす腹筋運動
腹筋への効果がないわけではありませんが、体を起こすときに股関節を曲げる筋(腸腰筋など)を同時に強く使うため、腹筋を重点的に鍛える方法ではありません。
また、繰り返し腰椎にも無理な負荷がかかるため、ヘルニアに対してはNGな運動となります。
NG②:うつ伏せで足を押さえて上半身を反らせて起こす運動
「背筋といえばこれ」という定番の動きですが、力を入れて背中を反らせるため、瞬間的に椎間板に大きな力がかかります。ストレスが大きいため、おすすめできる方法ではありません。
そのほか、脊柱が動きながら大きな力がかかる方法は無理がありますので避けましょう。
筋トレを中止してすぐ病院に行くべきサイン
次のような症状がある場合は、筋トレを中止して早めに医療機関を受診してください。
- 足のしびれが強くなる、または足に力が入らない
- 排尿・排便の異常がある
- 安静にしていても痛みが続く
- 発熱を伴う
- 筋トレをすると痛みが増す
痛みが出ない範囲で行うのが大前提です。自己判断で続けず、症状が変化したときは医師や理学療法士に相談しましょう。
しびれの症状については、椎間板ヘルニアのしびれで詳しく解説しています。
番外編:筋トレ以外で椎間板ヘルニアに取り入れたい方法
筋トレ以外では、背中を反らすマッケンジー法と、正しい姿勢を身につけることが大切です。

マッケンジー法(背中を反らす体操)
歴史のある方法で、効果のある場合が多いようです。ここでは一般的に腰椎の椎間板ヘルニアに対して行う体操を紹介します。
この方法は背中を反らすことで症状の改善を図るものですが、逆効果になる場合もあります。悪化する場合はすぐに中止してください。
症状に応じて、次の手順を順に行っていきます。
- うつ伏せに寝ます: この姿勢が楽にできる方は次のステップへ。つらい場合は枕などをお腹の下に入れて調整します。5〜10分行います。
- うつ伏せから両肘を曲げて、肘で上半身を支えます: スフィンクスのような姿勢で5〜10分。背中を反らせる程度は、肘をつく場所を変えて無理のないように調整します。症状が軽くなれば継続し、楽にできるようになったら次へ進みます。
- さらに背中を反らせます: うつ伏せで両手をついて肘を伸ばし、上半身だけ腕立て伏せをするようなイメージです。背筋は使わず手の力で上半身を持ち上げ、腰は床につけたまましっかり反らせます。10回を1セットとし、最後の2回は手を伸ばし切った位置で数秒保持します。痛みが強い場合は中止してください。
上記の体操を状態に応じて調整しながら2〜3時間おきに行い、改善したら回数を減らして1日4回程度にします。
正しい姿勢を身につける
悪い姿勢は椎間板ヘルニアの悪化原因となるため、常に正しい姿勢を意識しましょう。
脊柱の腰の部分が軽く前方に凸の状態が良い姿勢です。背中が丸くなると後方に凸になってしまいます。正座をして背筋(せすじ)を伸ばすと、腰にとって良い姿勢になります。
姿勢が悪くなっていないか、時々チェックしましょう。壁に背中・肩・後頭部をつけて背筋を伸ばす、身長を測るときの要領です。
長時間の運転やデスクワークは椎間板の同じ場所に偏った力がかかりやすいので、定期的に背中を反らす体操などをして、できるだけ良い姿勢を保ってください。日常の歩行も、背筋を伸ばして歩くよう心がけましょう。
よくある質問
Q. 椎間板ヘルニアの筋トレは、いつから始めていいですか?<br>痛みが落ち着いて比較的動けるようになってからが目安です。腹式呼吸は椎間板へのストレスが少なく、発症後比較的早期から行えます。症状が落ち着いて通常の生活ができるようになったら、10回程度の連続から始めてみてください。不安がある場合は、始める前に医師や理学療法士に相談しましょう。
Q. 筋トレの回数はどのくらいが目安ですか?<br>各種目とも「10回程度」または「左右5回ずつ」から始めるのが目安です。痛みが出るようなら中止して、時間をおいてから試し直してください。週に1回でも2回でもよいので、途中でやめずに継続することが大切です。
Q. 普通の腹筋運動や背筋運動をしてはいけないのはなぜですか?<br>両足を伸ばして上半身を起こす腹筋運動は腸腰筋などを強く使い、繰り返し腰椎に無理な負荷がかかるためです。うつ伏せで上半身を反らす背筋運動は、瞬間的に椎間板へ大きな力がかかります。代わりに、クランチのように体を全部起こさない腹筋や、四つ這いでの背筋トレーニングを選びましょう。
まとめ:椎間板ヘルニアでも筋トレはOK。正しい方法で継続しよう
- 椎間板ヘルニアでも、痛みが落ち着いていれば痛みの出ない範囲で筋トレはOK
- 鍛えたいのは腹筋・背筋・殿筋・腸腰筋。とくに体幹のインナーマッスルが中心
- 各種目は10回程度/左右5回ずつから。反動をつけず、ゆっくり行う
- 両足を伸ばして起き上がる腹筋と、うつ伏せで上半身を反らす背筋はNG
- しびれの悪化・脱力・排尿排便の異常・安静時痛・発熱・筋トレで痛みが増す場合は中止して受診
- 筋トレも姿勢の改善も、週1〜2回でもよいので継続が大切。調子がよくなっても急に無理をしない
筋トレを正しい方法で行うことで、良い姿勢を保ちやすくなり、椎間板ヘルニアの症状の改善が期待できます。椎間板ヘルニアの全体像は椎間板ヘルニアまとめもあわせて参考にしてください。
参考文献
- 日本整形外科学会・日本腰痛学会監修『腰痛診療ガイドライン2019』(腰痛に対して運動療法が推奨されている)
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
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