圧迫骨折のリハビリは、骨折してからの時期・痛みの強さ・姿勢の3つを確認したうえで、段階を追って進めていくのが基本です。
- おおむね1〜6か月(直近の骨折)は、安静と骨折部位に負担をかけない動作が中心になります
- 6か月以降(昔の骨折)は、ストレッチや筋力トレーニングで身体機能の回復を目指していきます
- 高齢の方でも、リハビリによって痛みの軽減・改善が期待できます
- 安静のしすぎは筋力低下・関節可動域の制限・骨密度の低下につながるため、医師の許可が出たら動ける範囲で動くことが大切です
- リハビリの土台は「良い姿勢を意識すること」。骨癒合を助け、再発の予防にもつながります
圧迫骨折のリハビリを始める前に確認したい3つの評価
圧迫骨折のリハビリは、評価なしには組み立てられません。最低限、「いつの骨折か」「痛みはどの程度か」「姿勢が崩れていないか」の3点を把握したうえで取り組むことで、改善に近づきやすくなります。
この3点は専門家だけが行うものではなく、ご本人やご家族が把握しておくだけでも、今の状態がよくなっているのかを判断する材料になります。
評価① 昔の骨折なのか、最近の骨折なのかを知る
まず確認したいのは、その圧迫骨折が「最近のもの」なのか「昔のもの」なのかです。時期によってリハビリの内容が変わってくるからです。ここでは、
- 1か月〜6か月くらいを「最近の骨折」
- 6か月以上経過した場合を「昔の骨折」
と考えていきます。圧迫骨折などにおける急性期の期間には明確な定義があるわけではないため、あくまで目安としての区分です。
昔の骨折の場合は、比較的動いたほうが痛みは改善しやすい傾向があります。一方、最近の圧迫骨折であれば安静寄りに考えたほうがよいでしょう。つまり、
- 1〜6か月の間は、安静と負荷をかけないことを中心にしながら、日常生活動作や活動を少しずつ取り入れていく
- 6か月以降は、積極的にストレッチや筋トレなどを行い、身体機能の回復・改善を目指していく
というように、段階を追ってリハビリ内容を変えていく必要があります。
ただし、圧迫骨折はご本人が気づいていない場合があり、いつ骨折したのかわからないことも珍しくありません。時期がはっきりしない場合は、自己判断せずに医師の指示を確認してください。
評価② 「痛み」の強さを把握する
次に、今の痛みがどのくらいなのかを把握しておきます。痛みの度合いを知っておくと、改善の具合がわかりやすくなるからです。
ただし痛みは主観的なもので、そのときの精神状態や痛みの質など、さまざまな要素で感じ方が変わります。そのため、客観的に評価することは簡単ではありません。そこで、感覚的(直感的)に痛みの程度を表すスケールを使う方法が参考になります。
- VAS(Visual Analogue Scale)……「全く痛みがない」状態から「最悪の痛み」までの直線上で、今の痛みがどのあたりかを示す方法
- NRS……0から10までの数字で痛みを表す方法
- FPS……表情の絵で痛みを表す方法
評価するときは、安静時、起き上がり時、立ち上がり時、歩行時など、動作と痛みの関係も含めて記録しておくとよいでしょう。「どんなときに痛いのか」「どのような動作をすると痛いのか」「いつ痛くなりやすいのか」を把握しておくと、リハビリを続けたときの変化が見えやすくなります。
評価③ 「姿勢の分析」をする
3つ目は姿勢の確認です。圧迫骨折に限らず、姿勢の評価はとても重要です。
圧迫骨折は、一部は外傷によって生じますが、多くは姿勢が悪い状態が続くことで背骨が自然に潰されてしまい、圧迫骨折になっていた、というパターンです。悪い姿勢は圧迫骨折の原因になると考えてよいでしょう。
姿勢の分析といっても難しく考える必要はなく、「悪い姿勢になりすぎていないかを確認する」という意味あいです。鏡や写真で背中の丸まり具合を見る、ご家族に横から見てもらうといった方法でも気づきが得られます。悪い姿勢にならないよう意識するだけでも、リスク回避につながります。
圧迫骨折のリハビリの肝は「良い姿勢」を意識すること
圧迫骨折のリハビリで最も大切なのは、良い姿勢を意識することだと言えます。良い姿勢を保つことで、圧迫骨折の治療は進みやすくなるからです。理由は大きく2つあります。
理由① 良い姿勢は骨癒合を助ける
骨折した椎体は、骨癒合させる必要があります。骨癒合することで脊柱が安定し、痛みも改善する傾向にあるからです。
逆に、骨癒合の時期に姿勢が悪い(背骨が不安定な)状態が続くと、骨癒合がうまくいかなくなることがあり、長期的に痛みが悪化してしまう場合もあります。「姿勢が悪くなる = 骨癒合が悪くなる」と考えると、良い姿勢の重要性がわかりやすいと思います。
その点で、コルセットは強制的に良い姿勢に近づけてくれる要素があるので効果的な道具ではあります。ただし頼りきってしまうと長期的には良くないので、頼りすぎない意識も持っておきたいところです。詳しくはコルセットの効果についての記事も参考にしてください。
理由② 良い姿勢は圧迫骨折の再発予防になる
姿勢が悪くなると背骨への圧縮力が高まり、圧迫骨折の再発の可能性が高くなります。
特に骨粗鬆症がある場合はその傾向がさらに強まり、椎体の骨密度が下がることで骨折を起こしやすくなります。高齢になると骨密度は低下しやすく、高度な骨粗鬆症では大きなきっかけがなくても骨折を起こすことがあります。また、1か所圧迫骨折を起こすと、その他の椎骨も骨折を起こしやすくなるという特徴もあります。だからこそ、良い姿勢の管理が大切になるのです。
高齢者の圧迫骨折もリハビリで良くなることが多い
高齢者の圧迫骨折であっても、リハビリによって痛みが軽減・改善する方は多くいらっしゃいます。年齢だけを理由に諦める必要はありません。
圧迫骨折は高齢者に多い背骨の骨折で、骨粗鬆症のある方に起こりやすいと言われています。「もう年だから」という理由で治療をあきらめてしまうのは、もったいないことです。
高齢者の圧迫骨折がリハビリで良くなる理由
リハビリをすることで、圧迫骨折を予防・改善するための筋肉を鍛えたり、身体機能を向上させたりできるからです。たとえば、
- 日常生活のなかで良い姿勢を意識するようになった
- 全身的に筋トレをするようにした
- ストレッチをこまめにするようにした
といった取り組みです。これらを続けることで筋力が上がり、体の柔軟性が向上し、結果として痛みが起きにくい体に変わっていく、という発想です。
骨折した部位そのものは、自然にくっつくのを待つか、くっつかなくても痛みが治まるのを待つしかない面があります。そのうえで、リハビリによって「圧迫骨折になりづらい体」に変えていくと考えるとイメージしやすいと思います。
なお、圧迫骨折は背骨の一部がつぶれるように折れる骨折です。骨粗鬆症など骨がもろくなっている状態がベースにあることもありますが、基本的には骨折なので外傷(けが)と考えてください。外傷とは、外力により生じた組織・臓器の損傷を指すとされています(日本形成外科学会)。
骨がくっつかなくても痛みが軽くなる場合がある
骨癒合しなかったからといって、必ず痛みが残るわけではありません。背骨の骨が癒合しなくても、痛みが軽減したり消失したりする場合があります。
研究によっても違いはありますが、全体の数%〜10数%程度は骨がつながらず、偽(ぎ)関節(骨と骨の間が動く、関節のような状態)となる場合があると言われています。この偽関節によって痛みを感じてしまうことがあります。
一方で、偽関節になっても必ずしも症状が出るわけではなく、症状が出た場合には手術などの治療法も残されています。もし偽関節と言われたとしても、過度に不安になる必要はありません。
痛みが長引く理由や治療の選択肢については、圧迫骨折の痛みが続く理由と治療の考え方で詳しくまとめています。
入院から退院までの圧迫骨折リハビリの流れ
圧迫骨折で入院した場合のリハビリは、ベッド上の運動から始まり、歩行訓練、日常生活動作訓練へと段階的に進んでいきます。ただし進み方は圧迫骨折の程度や状態によって異なりますので、以下は参考としてご覧ください。
例:83歳 女性 主婦Sさん
Sさんは、ある日、自宅でトイレへ移動する途中に転倒(しりもち)をしてしまいました。腰に痛みを感じて受診したところ、第12胸椎の圧迫骨折と診断され、入院となりました。治療は入院して安静とリハビリという形になりました。
入院直後〜1週:ベッド上の運動とコルセットの作製
入院翌日には、医師よりベッド上でのリハビリが処方されました。
通常はベッド上で安静にする時期ですが、完全に安静にしてしまうと筋力低下なども起きるため、骨折部位に影響を与えない部位の運動を行います。たとえば足首の運動です。足首の運動は、筋力低下を防ぐほか、循環障害や深部静脈血栓症などの予防にも効果があるとされています。
また、入院後早期にコルセット(硬性)が処方され、義肢装具士によって製作されます。コルセットは採型後おおよそ1週間以内に完成し、装着状態を確認して問題がなければ装着の指示が出ます。硬性コルセットは文字通り硬く付け心地が良いとは言えませんが、固定性が高いので骨折部位の動きを最小限に抑えることができます。
2週後:歩行訓練の開始
入院から2週間後、医師より歩行訓練の許可が下り、リハビリ室での訓練が始まりました。
まず平行棒内で立つ、立ち上がることに慣れてから、歩行の練習が始まります。次に歩行器へ移ります。歩行器は体重を預けて歩くことができるので、背骨への負担の軽減につながります。歩行訓練と並行して、下肢の筋力増強訓練なども行っていきます。
6〜8週:日常生活動作訓練と退院
入院から6週後ごろから、退院に向けて日常生活動作訓練や階段昇降などを行い、8週後に退院となりました。
退院時には硬性コルセットから軟性コルセットに変更となり、退院後も念のため1か月間はコルセットを装着するよう指示がありました。その後、コルセットは着けたり着けなかったりという状態でしたが、腰の痛みは落ち着いており、大きな問題なく自宅での生活を送られています。背骨の状態確認のため、退院後も外来でのフォローが行われました。
Sさんは、入院してリハビリを行い、コルセットを装着し、経過も良好だった典型的な例です。あくまで一例として参考にしていただければと思います。
動けるなら動いたほうが良くなりやすい
圧迫骨折のリハビリでは、「動けるなら動く」という考え方が基本にあります。安静は良くするための方法ではなく、痛みを悪化させないための一時的な方法だからです。
安静にしすぎることで起こること
骨癒合期間中は動きを制限する必要がありますが、癒合が完成して脊柱の状態が安定してきたら、動かしたほうがよいと考えられます。必要以上の安静はむしろ逆効果になりかねません。
特に臥床した状態が長くなると、
- 筋力の低下
- 関節可動域の低下
- 心肺機能の低下
が起こり、全身状態が悪化していきます。さらに、臥床によって骨密度も低下しやすくなるため、骨折を起こしやすくなるという悪循環も生まれます。高齢の方ほど影響は大きく出やすいところです。
また、腰痛に関する研究でも、早期に動き始めたほうが予後が良いことがわかっています。医師の許可が出たら、無理をする必要はありませんが、動ける範囲で動くようにしていただきたいと思います。
動くことは身体面にも精神面にもプラスになる
動くことで、筋力や関節可動域の低下をある程度防ぐことができます。
さらに、活動することのメリットは身体的な部分だけではありません。活動性が低下すると抑うつなど精神面へのデメリットが生じやすくなりますが、逆に活動することで気持ちはポジティブに変化しやすくなります。精神的にポジティブになれば、脳が痛みを抑制する機能も活発になります。
ただし、無理に動きすぎるのも危険です
無理に動きすぎると痛みを増悪させてしまう危険性もあります。無理のない範囲で、少しずつ、そのときの状態に合った活動を行うようにしてください。
「安静にしすぎるのも良くない」「動きすぎるのも良くない」。この両方を意識しながら、医師やセラピストの助言を受けて進めましょう。
自宅でできる圧迫骨折のリハビリ運動とストレッチ
自宅でのリハビリは、背骨に大きな負担をかけない範囲で、優しく・ゆっくり・継続して行うことが基本です。
ストレッチのポイント
ストレッチのポイントは、背骨や組織に大きな負担をかけないよう、優しくゆっくり伸ばすことです。
無理やり過度なストレッチをすると、背骨に大きな負荷がかかり、圧迫骨折を再発させてしまう危険があります。筋肉が弱っている場合は、筋肉の断裂などの障害を起こすことも考えられます。短時間で効果を出そうと思わず、継続して時間をかけて行うことが大切です。
体操① 猫背の体操
四つ這いになり、背中を丸めて伸ばす運動をゆっくりと行ってみてください。四つ這いで背中を丸めたり反らしたりする方法は、比較的負担が少ない運動です。
痛みがある場合は無理をせず、少しずつで結構です。
体操② 股関節・体幹の回旋運動
体幹の回旋運動は、強くひねらず、揃えた両足を左右にゆっくり倒す程度から始めてみてください。
筋力トレーニングとバランス練習
日ごろから運動して筋力(特に下肢)を維持し、バランス能力を保って転倒しにくい体づくりをすることも大切です。スクワット(立ちしゃがみ)、片足立ちでバランスを保持する、後ろ歩きをする(安全に注意して)といった簡単な動作でも、歩行や立位バランス保持のための筋トレになります。
筋力がついて、ストレッチで体が柔軟になることで、良い姿勢が保ちやすくなり、腰への負担も軽減されます。なお、これらの運動を始める時期は状態によって異なります。骨癒合の途中である場合は、必ず医師やセラピストに確認してから行ってください。
圧迫骨折でも良い姿勢を保てる人はいます
圧迫骨折になったからといって、必ず姿勢が悪くなるわけではありません。実際に、圧迫骨折のある方でも比較的良い姿勢を保てている方はいらっしゃいます。
圧迫骨折の状態はすべて同じではなく、骨のつぶれ方が少ない場合は悪い姿勢になりづらいといえます。また、椎体がつぶれたとしても、ある程度は筋力を使って姿勢を維持することが可能です。骨折していてもしていなくても、良い姿勢を維持するには意識が必要という点は変わりません。
骨が癒合するまでは体幹の装具(コルセット)による固定が必要ですが、必要以上に安静にする必要もありません。医師の指示に従ったうえで、できるだけ早めに動いていくのがよいでしょう。
退院後の生活で気をつけたいこと
退院後は、腰に負担のかかる動作を避けることと、転倒しない環境づくりが再発予防の中心になります。
床の物を拾うときの動作に注意
骨粗鬆症があると、ほんのちょっとしたことで骨折を起こしてしまうことがあります。理学療法士が担当していた方の例では、退院時指導として「床の物を拾うときは腰を曲げずに膝を曲げてください」とお伝えしていました。ところが退院後まもなく、その方は床から物を拾おうとして腰を曲げたところ腰が痛くなり、再入院となりました。結果的に圧迫骨折の再発のような形でした。個人差はありますが、腰を曲げるだけで圧迫骨折になってしまう方も実際にいらっしゃいます。
とはいえ、日常生活で姿勢や動作をずっと意識し続けることは簡単ではありません。注意や意識には限界があるので、できないときもあります。大切なのは、何かが起きたときに適切な対処ができるかどうかです。
転倒しにくい環境をつくる
しりもちなどの転倒は圧迫骨折の原因になりやすいため、住まいの環境を見直すことも有効です。
- 自宅内につまずきやすい敷物を敷かない
- 電気のコードなどを床に這わせない
- 歩くときにふらつきを感じる場合は、歩行補助具(杖、押し車など)の使用も検討する
ご家族や介護をされる方の視点については、圧迫骨折の看護・介護についての記事も参考にしてください。
すぐ医師に相談すべきサイン
以下のような症状がある場合は、リハビリを自己判断で続けずに、早めに医療機関を受診してください。
- 足のしびれや脱力がある、力が入りにくい
- 排尿・排便の異常(出にくい、我慢できないなど)がある
- 痛みが以前より強くなってきた、または長引いている
- 発熱がある
- 新たに転倒した、しりもちをついた
圧迫骨折は痛みを感じないまま進行していることもあり、最初は軽い骨折だったものが時間の経過とともに進行することもあります。痛みがなくても背骨に違和感がある、姿勢が悪くなったと感じる場合も受診しておくと安心です。
よくある質問
Q. 高齢でも圧迫骨折のリハビリの効果はありますか?
リハビリによって痛みが軽減・改善したという方は多くいらっしゃいます。良い姿勢の意識・筋力トレーニング・ストレッチで身体機能を高めていくものなので、年齢だけで効果がないと決まるわけではありません。ただし進み方には個人差があり、全員が同じように良くなるとは限りません。医師やセラピストと相談しながら進めてください。
Q. 骨がくっつかないと痛みは取れないのでしょうか?
必ずしもそうではありません。背骨の骨が癒合しなくても、痛みが軽減したり消失したりする場合があります。骨がつながらず偽関節となるのは全体の数%〜10数%程度と言われていますが、偽関節になっても症状が出ない方もいます。
Q. 入院した場合、どのくらいで退院できますか?
状態によって大きく異なります。紹介した例では、入院翌日からベッド上の運動を開始し、2週後に歩行訓練、6週後から日常生活動作訓練、8週後に退院という経過でした。あくまで一例としてご覧ください。
まとめ
- 圧迫骨折のリハビリは、「骨折の時期」「痛みの強さ」「姿勢」の3つを確認してから組み立てます
- 直近1〜6か月は安静と負担をかけない動作が中心、6か月以降はストレッチや筋トレで機能回復を目指します
- リハビリの土台は良い姿勢の意識。骨癒合を助け、再発予防にもつながります
- 高齢の方でもリハビリによって痛みの軽減・改善が期待できます
- 安静のしすぎは筋力低下・関節可動域の制限・骨密度の低下を招くため、医師の許可が出たら動ける範囲で動きましょう
- ただし無理に動きすぎると痛みが悪化する危険もあり、状態に合った活動量を保つことが大切です
- 退院後は、腰を曲げる動作への注意と、転倒しにくい環境づくりが再発予防の中心になります
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
最新記事 by 平林康平 (全て見る)
- ぎっくり腰で動けないときの対処法|起き上がり方 - 2026年8月24日
- 肥満と腰痛の関係|体重増加による腰の痛みと対策 - 2024年5月28日
- 腰痛の背後に潜む?専門家が指摘する可能性のある12の病気 - 2022年5月4日












コメントを残す