スポーツ選手や運動習慣のある方でも、腰痛になることはあります。病院を受診して「腰椎椎間板症(ようついついかんばんしょう)ですね」と診断されたとき、気になるのは「腰は痛いけれど、ある程度の運動はして良いのか?ダメなのか?」ということではないでしょうか。
結論からお伝えすると、腰椎椎間板症でも運動して良い場合があります。ポイントは、医師の許可があるかどうかと、運動の前後で痛みが強くならないかどうかです。逆に、安静時から強い痛みがある場合や、運動で明らかに痛みが増す場合は中止が必要です。
この記事では、腰椎椎間板症のときに運動して良い場合とダメな場合の判断基準、運動やストレッチの選び方、そして中止して受診すべきサインまでを解説します。
腰椎椎間板症でも運動して大丈夫?判断の基準を紹介

腰椎椎間板症でも、運動して良い場合と、運動してはダメな場合があります。それぞれの判断基準を紹介します。
運動して良い場合
- 医師から許可されている
- 安静時の痛みがない
- 運動時に痛みがないか、あっても痛みが出るポイントが限られている
- 運動直後に痛みが強くならない
- 運動の翌日に痛みが強くならない
- 痛みの出ない運動種目に限定して行う
腰椎椎間板症の診断を受けても、医師から運動の許可が下りていれば運動しても良いでしょう。ただし、症状の変化には注意してください。
診断は受けたけれど、運動の可否について説明を受けられなかった場合は、痛みの症状を見ながら決めましょう。基本的に、運動によって明らかに痛みが強くなる場合、その運動は避けた方が良いです。
スポーツは身体の多くの動きを伴うため、痛みを出す可能性も大きくなります(通常、スポーツは腰椎にかかる負荷が大きくなることが多いです)。なので、負荷の軽いスポーツから始めて、どの運動であれば腰痛が悪化しないのかを見極めましょう。痛みを我慢して続けることは、腰の痛みを悪化させる恐れがあるため注意が必要です。
運動してはダメな場合
- 医師から禁止されている
- 安静時の強い痛みがある
- 運動時に常に痛みがある
- 運動直後に明らかに痛みが強くなる
- 運動の翌日に痛みが強くなる
医師から禁止された場合は、しばらく運動を中止して、許可が下りてから再開しましょう。
自分で判断する場合は、痛みが指標になります。運動によって痛みが強く出る場合は、とりあえず中止します。無理をして続けるより、いったん休んで様子を見る方が結果的に近道になることが多いです。
腰椎椎間板症のときの運動・ストレッチの選び方
運動を中止している間でも、まったく体を動かせないわけではありません。選び方のポイントは「腰椎に負荷のかかりにくい種目を選ぶ」ことです。
- 痛みの出ない範囲でのストレッチ
- 腰部に関係のない部位の筋トレ
- エアロバイクや水中ウォーキングなど、腰椎に負荷のかかりにくい運動
痛みの出ないストレッチや、腰部に関係のない部位の筋トレなどであれば、行っても良いでしょう。また、エアロバイクや水中ウォーキングなどの運動であれば痛みが出ない場合もあるため、運動内容を工夫してみることも必要です。
いずれの場合も、「運動中・直後・翌日に痛みが強くなっていないか」を毎回確認しながら、痛みの出ない種目に限定して行うことが大切です。運動時に痛みが出るポイントが限られているのであれば、その動きを避けた種目に切り替えるという工夫もできます。そして、痛みが出ないことを確認できたら、徐々に運動量や種目を増やしていきましょう。
具体的なリハビリの内容については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:腰椎椎間板症のリハビリについて
そもそも腰椎椎間板症とはどんな状態?

腰椎椎間板症とは、変性と損傷によって起こる椎間板の障害のことです。
腰椎は背骨の腰の部分にあり、通常5つの骨(椎骨)からなります。それぞれの椎骨の間には、椎間板と呼ばれるクッションの役割を果たす円盤状の組織が挟まっています。
椎間板は10代から老化が始まり、変性(弱っていくこと)していくと言われています。この変化に加えて、腰椎には動きによって大きなストレスがかかるため、損傷が起こって亀裂が入ることがあります。椎間板の表面には痛みを感じる神経があるため、亀裂などの損傷が起きると痛みを感じると考えられています。
また、椎間板自体は自然修復が困難な組織であるという特徴があり、進行すると椎間板ヘルニアを起こすこともあります。
一方で、検査をしても腰に原因が見当たらない場合に、「椎間板に何かしらの原因があるのだろう」という予想から腰椎椎間板症と診断されることもあります。腰痛の多くは原因不明と言われていますが、その理由として、通常の検査では発見されないところに異常があるということがあります。レントゲン写真上では骨に異常が認められず、筋肉などの組織にも原因がなく、上体の前屈などで痛みが増強する場合などに、「椎間板に問題がある可能性が高い」と考えられるのです。
つまり、腰椎椎間板症は原因不明の腰痛によく使われる診断名でもあります。この診断名がついたからといって、極端に不安になる必要はないかなぁと思います。
病態や原因の詳しい解説は、こちらの記事を参考にしてください。
関連記事:腰椎椎間板症とは何か?原因・症状・治し方と予防のポイント
なお、参考として厚生労働省「平成26年患者調査」を見ると、平成8年から平成26年の間に椎間板障害の総患者数は約35万人から約41万人に増えた一方、腰痛及び坐骨神経痛は約42万人から約31万人に減っています。これは、症状名(腰痛症)ではなく病名(椎間板症など)で診断する流れが進んだ影響ではないかと推測されます。腰椎椎間板症という診断が多い背景として、参考程度に知っておくと良いでしょう。


腰椎椎間板症と診断されても腰痛が改善する人は多い

椎間板そのものの自然修復は困難ですが、さらなる椎間板の損傷を防ぎ、損傷部位の炎症が収まれば、炎症性の痛みは改善します。つまり、椎間板への負荷を軽減させることで、腰痛の改善が期待できるのです。
ただし、注意点があります。一時的に休めば痛みは治まることが多いのですが、再び同じ生活に戻ると、そのうちまた同じような腰痛に見舞われることが多くあります。
したがって、腰痛を再発させないためには、次のような取り組みが必要です。
- 体幹・下肢の筋力強化
- 動作の改善
- 姿勢の改善
このように腰部に関連する部分を見直すことで、腰痛を悪化させないことは十分に可能ですし、さらに軽減・改善につなげられる可能性も高いと感じます。諦めずに、腰痛を治すための行動を続けていきましょう。
そもそも腰痛の原因はたくさんあります。姿勢が悪いだけで腰に痛みが起きる、同じ姿勢を長時間とっているだけで痛みが起きる、ストレスを感じると痛みが起きる、ということもあります。腰椎椎間板症と診断されても、痛みのすべてが椎間板によるものとは限らないため、腰の痛みが無くなる人は多くいます。まずは不安になりすぎず、できることから取り組んでいきましょう。

運動で痛みが増す場合は中止|すぐ病院に行くべき危険なサイン
繰り返しになりますが、運動によって明らかに痛みが強くなる場合は、その運動を中止してください。痛みを我慢して続けると、腰の状態を悪化させる恐れがあります。
椎間板の損傷が強い状態で無理をすると、椎間板内部の髄核(ずいかく)が飛び出してくることがあります(椎間板ヘルニア)。そうなると手術が必要になる場合もあるため、進行させないことが重要です。
さらに、次のような症状がある場合は、運動を中止したうえで、早めに整形外科などの医療機関を受診してください。
- 足のしびれや痛み、脱力(力が入らない)がある
- 排尿・排便の異常(尿が出にくいなど)がある
- 安静にしていても痛みが続く
- 発熱を伴っている
- 転倒・事故など外傷のあとから痛みが出た
- 運動のたびに痛みが明らかに強くなる
特に、足にしびれや痛みが生じる症状(坐骨神経痛)が出てきた場合は、椎間板症が進行している可能性が考えられます。運動は中止して、MRIの検査を受けることをおすすめします。
腰椎椎間板症の運動・ストレッチに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 腰椎椎間板症でもストレッチはして良いですか?
痛みの出ない範囲であれば行っても良いでしょう。ただし、ストレッチ中や直後、翌日に痛みが強くなる場合は中止してください。医師から運動を禁止されている場合は、許可が下りてから始めましょう。
Q2. どんな運動から始めれば良いですか?
エアロバイクや水中ウォーキングなど、腰椎に負荷のかかりにくい運動から始めるのがおすすめです。スポーツを行う場合も、負荷の軽いものから始めて、どの運動なら腰痛が悪化しないのかを見極めていきましょう。
Q3. 運動を続けて悪化することはありますか?
痛みを我慢して無理を続けると、悪化する恐れがあります。椎間板の損傷が強い場合、無理をすると髄核が飛び出して椎間板ヘルニアへ移行してしまうこともあります。運動の前後で痛みが強くなっていないかを毎回確認し、痛みが増す場合は中止して医療機関に相談してください。
まとめ:腰椎椎間板症でも運動はOK。痛みを指標に、悪化させない範囲で
腰椎椎間板症と診断されたからといって、すべての運動が禁止というわけではありません。痛みの程度や運動の種類によっては、運動して大丈夫です。
- 医師の許可と痛みの状態を基準に、運動の可否を判断する
- できる限り腰椎に負担のかかりにくい運動(ストレッチ・腰部に関係ない筋トレ・エアロバイク・水中ウォーキングなど)から選び、徐々に増やす
- 腰痛が悪化しない範囲で、注意深く行う
- 痛みが明らかに増す場合や、足のしびれなどのサインがある場合は中止して受診する
腰椎椎間板症が悪化すると、腰椎椎間板ヘルニアへ移行し、手術が必要になる場合もあります。進行させないことが重要なポイントです。痛みを指標にしながら、上手に運動と付き合っていきましょう。
どんな症状が出やすいのかを知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:腰椎椎間板症は原因不明の病状である。その理由と症状を語る
参考文献<br>日本整形外科学会・日本腰痛学会監修『腰痛診療ガイドライン2019』
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
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