筋ジストロフィーの遺伝的なしくみを簡単解説

筋ジストロフィーの遺伝について

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理学療法士 イワモト

こんにちわ。

mamotteライターで理学療法士のイワモトです。

筋ジストロフィーの遺伝について解説します。

筋ジストロフィーは遺伝による要因が強く、染色体の異常が原因で発症することが知られています。

この異常は、次の3つのパターンに分類されます。

  1. X染色体連鎖
  2. 常染色体優性遺伝
  3. 常染色体劣性遺伝

筋ジストロフィーを理解するには、これらの遺伝パターンについて知識を持つことが重要です。

この記事を読んで得られる事

この記事を読めば

◎ 筋ジストロフィーの変異を知る事によって、筋ジストロフィーの原因が理解できるようになると思います

少しでも筋ジストロフィーの理解が増えたら嬉しく思います。

それでは、本日もよろしくお願いいたします。


理学療法士 平林

※この記事はリハビリテーションの専門家で、理学療法士である運営者平林と、理学療法士イワモトの考えや意見をまとめて紹介しています。

なので、共感できる部分は共感して、納得できる内容は納得していただけると幸いです。

執筆者・運営者は、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の国家資格を取得しており、実際に病院やクリニック、介護施設など様々な場所で現場で学んできています。

ですので、記事内で紹介している内容は、リハビリテーションの視点を持った国家資格者の視点からみた意見と臨床での事実を述べています。

それを踏まえて、記事の内容は自信を持って提供しています。

しかし、【内容が絶対正しい!】とは思わないでください。

というのも、世の中には、沢山の治療方法や治療の考え方があって。

  • どれが正しくて、どれが間違っているのか?
  • どれが自分に適している治療なのか?

個人的な意見も沢山あり、個人の解釈や価値観、考え方によって大きく違ってきます。

ですので、『絶対にコレが正しい治療方法だ!!』みたいな考え方はできなくて。

間違いなく言える事は、どんな治療においても、【実際に試してみないとわからないよ】。という事です。

【100%これが正しい】という治療方法は存在しません。

ですので、ここで紹介している内容も一人の理学療法士の意見である事を踏まえていただきたいと思います。

そして、この記事があなたの役に立てばうれしく思います。

mamotteライターの紹介


1 筋ジストロフィーの発症原因の遺伝について深く調べた

筋ジストロフィーの発症原因の遺伝について

筋ジストロフィーは、筋肉の繊維が壊れて再生を繰り返すことで、徐々に筋肉が萎縮し、力が弱まっていく進行性の遺伝性疾患です。

この病気は、骨格筋(姿勢や運動を支える筋肉)に特有の変化をもたらします。

その変化には、筋繊維のサイズの不均一、円形化、中心核の増加、結合組織の増殖、脂肪化があり、これらによって筋繊維束の構造が崩れていきます。

筋ジストロフィーにはさまざまな病型があり、遺伝形式、性別、症状、予後がそれぞれ異なります。

次に、遺伝的な観点からイラスト1を用いて詳しく説明します。

ジストロフィー変化の図式

ジストロフィー変化の図式 イラスト1

その① X染色体連鎖について

まず、女性はXX染色体を持ち、男性はXY染色体を持っています。

この遺伝形式では、女性のX染色体に変異があると、その変異が次の世代に引き継がれ、病気の原因となります。

この変異を持つ女性が母親の場合、女の子はX染色体を2本持っているため、2分の1の確率でキャリアになります。

キャリアとは、病気を発症しないものの、変異遺伝子を持っている人のことです。

一方、男の子はX染色体を1本しか持っていないため、2分の1の確率で病気を発症します。

X染色体連鎖

X染色体連鎖

その② 常染色体優性遺伝について

常染色体とは、性染色体以外の染色体のことで、人間の体細胞には22対、つまり合計44本の常染色体があります。

この遺伝形式では、一対の遺伝子のうち片方に変異があると病気が発症します。

つまり、父親か母親のいずれかの遺伝子に変異がある場合です。

そのため、子供に遺伝する確率は2分の1となります。この形式は性染色体とは関係ないため、男女の違いは影響しません。

常染色体優性遺伝

常染色体優性遺伝

その③ 常染色体劣性遺伝について

両方の遺伝子に変異がある場合、病気が発症します。

これは、父親と母親の両方がキャリアである場合に当てはまります。

その場合、子供が病気を発症する確率は4分の1であり、4分の2はキャリアとなります。

近親婚の場合、発症する確率が高くなります。

また、この形式は性染色体とは関係ないため、男女の違いは影響しません。

常染色体劣性遺伝

常染色体劣性遺伝

2 遺伝子の突然変異について

遺伝子の突然変異について

筋ジストロフィーは遺伝性の高い疾患ですが、遺伝子の突然変異によっても発症します。

現にデュシェンヌ型では3分の1が遺伝子の突然変異によるものです。

では、遺伝子の突然変異とはどのようなメカニズムなのでしょうか。

生殖細胞変異:親から受け継ぐ先天的なもので、全細胞にみられるDNAの変異です。

細胞の分裂に伴い変異も複写されてしまうので、分化した細胞全てが同じ変異を持つことになるのです。

精子や卵子の生殖細胞の中に異変があり、次世代にずっと受け継がれていきます。

後天的変異(体細胞変異):遺伝性とは違い、ひとつひとつの細胞のDNAの中で起こります。

変異が起こった細胞に由来する細胞へ引き継がれていきます。

細胞が分裂していく過程でミスが起こる場合などがそれにあたります。

誰もが遺伝子の突然変異の可能性を持っています。

それには個人差があり、DNAが損傷した場合の修復能力であったり、疲労や加齢、また化学物質など様々な要因が関係しています。

3 遺伝の確率について

遺伝の確率とは

遺伝の形式については前項で説明したとおりです。

ここでは、デュシェンヌ型・ベッカー型・福山型について確率や特徴を詳しく解説していきます。

デュシェンヌ型の発症率

日本に生まれてくる男の子のうち約3500人に1人が発症するとされています。

筋ジストロフィーの中で最も多く症状も重い型です。

デュシェンヌ型の特徴

X染色体劣性遺伝の形式を取ります。

母親の遺伝子の変異により男児にのみ発症しますが、必ずしも遺伝とは限らず突然変異のケースが3分の1を占めています。

女児は症状が出ず保因者となりますが、腓腹筋の肥大やCK値の上昇などの症状が出るケースもあります。

デュシェンヌ型は、X染色体のジストロフィン遺伝子に変異があり、ジストロフィンたんぱく質が欠損しています。

ジストロフィンは、筋細胞膜を保ったり補強したりする役割があるのですが、欠損していることにより、筋細胞膜が脆弱になり筋繊維の変性や壊死を起こしてしまうのです。

検査では、ck値が著明に上昇します。

CKとはクレアチンキナーゼのことで、筋肉細胞におけるエネルギー代謝に重要な役割を果たす酵素の一種です。

乳児期ではわかりにくく、3~5歳の幼児期に転びやすい・走るのが遅い・階段昇降が上手く出来ないなどの症状から発見されます。

筋力が弱いので、床から立ち上がるときに床に手をついて、臀部を高く挙げて立つ方法を取ります。

さらに症状が進行すると、床に手をついて次に膝に手をあてて立つ方法を取ります。(登はん性起立)

歩くときにお尻を振って歩く動揺性歩行も特徴です。

また、ふくらはぎの筋肉(以下腓腹筋)が太く、仮性肥大をを起こします。

これは筋の組織が崩壊したあとに脂肪組織に置き換わるためです。

筋力低下は、左右対称的に起こります。

症状が進行していくにつれ、筋の萎縮は近位(体幹に近いほう)から遠位に起こります。

例えば肩から肘、手首という順です。

10歳前後で起立・歩行が困難になり車椅子が必要になります。

20代で心不全・呼吸不全で死に至るケースが多いのですが、医療技術の進歩により生命予後は伸びてきています。

ベッカー型の発症率

日本に生まれてくる男児のうち約30000人に1人が発症するとされています。

ベッカー型の特徴

X染色体劣性遺伝の形式を取ります。

デュシェンヌ型と臨床像が似ています。

しかし、デュシェンヌ型が、ジストロフィンたんぱく質が完全に欠損しているのに対し。

ベッカー型はわずかながら生産され存在します。

よってデュシェンヌ型より症状が軽くなります。

発症年齢や進行速度には個人差があり、幅が広いです。

5~10歳の児童期に、転びやすい・走ることや階段昇降が上手く出来ないなどの症状で発見されます。

15歳過ぎても、歩行可能なケースが多く、中年以降まで生存します。

デュシェンヌ型と同様、近位筋から侵され起立や歩行が困難になります。

腓腹筋の仮性肥大も起こります。

ベッカー型に特徴的なのは、筋痛を起こしやすいこと・心肥大や心不全を起こしやすいことです。

自覚症状がなくても、定期的に心臓の検査を受けることが必要です。

福山型の発症率

日本に生まれてくる全ての子どものうち1万人に1人が発症するとされています。

日本の先天性筋ジストロフィーの中で最も多い型です。

福山型の特徴

1960年に福山幸夫教授によって報告されました。

常染色体劣性遺伝の形式を取り、9番目の染色体の変異によって起こります。

両親ともに遺伝子の変異がある場合に発症し、男女差はありません。

発症はしなくても保因者は80人に1人はいるとされています。

日本特有の疾患で、2000~3000年ほど前に日本人の祖先に突然変異が起こり広まったと言われています。

福山型は遺伝子のたんぱく質を作る情報部分に、余計な情報が書き込みをされているために正常なたんぱく質を作ることが出来ません。

筋細胞は、基底膜と細胞膜の2枚の膜で出来ています。

その2枚はボルトのようなもので固定されています。

そのボルト部分はいくつかのたんぱく質で出来ており、その中の補強する作用を持つaジストログリガンという物質が、遺伝子の異常によって正常に作られません。

よって、筋と筋の連結がもろく、不安定になり筋ジストロフィーを発症するのです。

新生児や乳児期に首の座りが悪い・寝返りやお座りが遅いなど、筋力のなさや筋緊張の低下からくる発育の遅れによって発見されます。

座位は、可能でも歩行は困難というケースが多いのですが、個人差が大きく出来る人もいます。

腓腹筋や頬筋の仮性肥大、また、精神遅滞やけいれんといった中枢神経症状を伴うのが特徴です。

誤嚥性肺炎や心不全を起こしやすく、20代で死亡するケースが多いですが医療技術の発達により生命予後は伸びています。

検査ではck値のほか、AST,ALT,LDHの上昇を認めます。

筋繊維の円形化・間質の増生はありますが、デュシェンヌ型と比べ壊死・再生は少ないです。

4 まとめ:できる限りの事をして、進行を遅らせよう

理学療法士 イワモト

いかがでしたでしょうか?

遺伝子が人間の体にどれほど影響を与えるか、理解していただけたかと思います。非常に奥深いテーマですね。

筋ジストロフィーに対する根本的な治療法はまだ確立されておらず、主に対症療法や合併症の予防が中心となります。その中でも、リハビリテーションが重要な役割を果たすと考えています。

この病気に罹った患者さんは、「遺伝だから仕方ない」と感じることもあるかもしれませんが、諦めずに病気と向き合い、最善を尽くしていただきたいです。

 

執筆:mamotteライター 理学療法士 イワモト

追記・編集:運営者 理学療法士 平林

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