ぎっくり腰になったとき、まず行いたい治し方の基本は次の4つです。
- 安静:少し動いただけでも痛い時期は、しばらく安静にする
- 冷やす:発症初期は痛みのある部位を冷やしてもよい
- 温める:初期の炎症が治まってから(目安は発症後3週間)
- 動ける範囲で動く:痛みが落ち着いてきたら、無理のない程度に体を動かす
安静が合う人もいれば、動ける範囲で動いた方がよい人もいて、ケースバイケースです。ただ、必要以上に安静にし続けないことがポイントで、痛みが落ち着いてきたら少しずつ日常生活を再開していくことが回復につながりやすいとされています。
この記事では、ぎっくり腰の治し方の基本、病院でのリハビリの流れ、マッサージや各種治療法の考え方、再発予防まで、理学療法士の視点で解説します。
ぎっくり腰の治し方は?まず行う4つの基本
ぎっくり腰の治し方の基本は「安静・冷やす・温める・動ける範囲で動く」の4つで、痛みの強さと時期に合わせて使い分けます。
ぎっくり腰は「魔女の一撃」と呼ばれるほど突然の激しい痛みを伴うことがあり、一時的に動けなくなることもあります。一方で、自然と良くなっていく場合も多い症状です。まずはこの4つを基本として、実際に様子をみながら試していくのがよいでしょう。

治し方① 安静・冷やす・温めるの使い分け
- 痛みが激しく、少し動いただけでも痛い場合は、しばらく安静にしましょう
- 発症初期は、痛みのある部位を冷やしてもよいでしょう
- 温めるのは、初期の炎症症状が治まってからです
- 目安として発症後3週間が、温めに切り替える一つの区切りです
上記は参考例で、基本的には実際に様子をみながら試してみる必要があります。冷やしたり、温めたり、安静にすることでぎっくり腰の痛みが軽減・改善するのであれば、その方法を続けて問題ありません。
発症直後の動き方や寝方など、最初の数日の過ごし方についてはぎっくり腰の応急処置の記事で詳しく解説しています。
治し方② 痛みが治まってきたら体を少し動かす
痛みが治まってきたら、少し体を動かしてみましょう。痛みで緊張が高くなっている筋肉を緩めると、痛みが楽になることがあります。
腰部や股関節周囲を、痛みに応じて無理のない程度に軽くストレッチします。
膝を抱えるストレッチ
- 仰向けになり、片方の膝を抱えて胸にゆっくり引き寄せます
- 反対側の脚は浮き上がらないようにします
- 左右5回程度行います
膝を倒すストレッチ
- 背中を床につけたまま、一方の膝と股関節を曲げます
- そのままゆっくりと膝を横に倒します(膝は床につかなくても構いません)
- 両膝を立てて、両脚とも倒す方法もあります
いずれも痛みの強くない範囲で行いましょう。痛みが強いのに無理に行うと逆効果になります。
治し方③ 必要以上に安静にしない
ぎっくり腰を起こした直後は、痛くて身動きがとれないこともあるでしょう。この時期に無理して動く必要はありません。
痛みは通常、数日程度で治まってきますので、そこから少しずつ体を動かし始めます。必要以上に安静にしないことがポイントです。軽いストレッチなどから始め、痛みがある動作は無理にしないでください。早めに日常生活を自立させるように心がけましょう。
日本整形外科学会・日本腰痛学会監修の『腰痛診療ガイドライン2019』でも、急性腰痛では過度な安静よりも活動を維持することが推奨されています。無理のない程度で体を動かしていくことは、回復の面でも効果的と言えるでしょう。
すぐ病院に行くべき危険なサイン
次のような症状がある場合は、セルフケアで様子をみるのではなく、早めに医療機関を受診してください。
- 足のしびれがある、または足に力が入らない
- 排尿や排便に異常がある(出にくい、感覚がない、漏れるなど)
- 安静にしていても痛みが続く、横になっても楽にならない
- 発熱を伴っている
- 転倒や事故などの外傷のあとに痛みが出た
ぎっくり腰は通称であり、医師の診察を受けて初めて、腰椎椎間板ヘルニアや腰椎分離症などの別の病態が見つかることもあります。こうした診断がついた場合には、それぞれに適切な治療法があります。発症時に正しい診断を受けておくことは、その後の治し方を考えるうえでも大切です。
ぎっくり腰の治療はリハビリをするべき?病院での流れ
ぎっくり腰の治療では、痛みの軽減だけでなく原因の評価と再発予防まで行えるリハビリに取り組むことをおすすめします。
ぎっくり腰は通称なので、医師の診察でどのような診断名がつくかによって、病院でのリハビリ内容は変わってきます。病院や診療所でリハビリを行うには対象疾患が決まっているため、診断名が必要です。それを踏まえたうえで、リハビリの一般的な流れを紹介します。

流れ① 評価:なぜぎっくり腰になったのかを調べる
なぜぎっくり腰になってしまったのかを見つけるために評価をします。問診情報に加えて、筋力、関節可動域、姿勢分析、日常生活習慣など、複数のチェック項目から身体機能を検査し、原因を洗い出します。
流れ② 運動療法:弱い点を鍛え、補う
- 筋力増強訓練
- ストレッチ
- 体操やバランス練習
など、評価で見つかった問題点を改善するためのプログラムを組んで行います。
流れ③ 徒手的療法:手技で筋肉をほぐし、調整する
腰痛に効果が期待できる徒手的療法を行う場合もあります。マッサージに近い感じではありますが、治療者が直接手を加えて、筋肉を調整したり緊張をほぐしたりするアプローチです。治療者の手技を使うので、徒手的療法といいます。
流れ④ 物理療法:温熱や電気で痛みの軽減を図る
温熱や電気といった物理的な機器を利用して、疼痛の軽減を図ります。機器を用いる方法なので、誰にでも効果を感じるというわけではありません。電気や温めで痛みが楽になったと感じる人もいれば、感じない人もいます。プラシボ効果の要素もあるため、絶対的に効果があるとは言い切れない点はあるでしょう。
流れ⑤ 日常生活動作指導:腰に負担をかける動作を修正する
腰に負担のかからない動作の仕方を指導したり、見直した方がよい生活習慣を伝えたりします。日常生活の中で、気づかないうちに腰痛につながることをしている場合があります。それに気づいてもらい、修正していくことで、ぎっくり腰の可能性を低くしていくという考え方です。
流れ⑥ 再発予防:日々のケアを続ける
ぎっくり腰が改善したら、再びぎっくり腰にならないように予防することが必要です。そのためには、日常生活習慣の意識を変える必要もありますし、筋トレやストレッチなどの日々のケアも少なからず必要です。
以上の6項目が、リハビリの一通りの流れです。
病院の処方は薬か湿布だけ?レントゲンの見方
病院での処方は、リハビリ以外では薬か湿布であることが多く、レントゲンの結果はあくまで参考程度に考えるのがよいでしょう。
病院でレントゲン写真を撮ると、
- 特に異常はありません(「重大な」異常はない、という意味が隠れています)
- 骨と骨の間が狭いですね
- 骨に棘が出てきていますね
などと指摘され、「骨の状態が少し悪くなっているから痛みが生じている可能性があります」と説明されることがあります。
しかし、骨の状態が悪くても、腰の痛みが必ず生じるとは限りません。骨の状態が悪くても腰の痛みを感じていない人もいるためです。レントゲンの状態は、あくまでも参考程度に考える方がよいでしょう。
また、骨の状態そのものを良くすることはできないため、レントゲンの結果から処方できるものも、リハビリ以外には薬か湿布しかないことがほとんどです。

ぎっくり腰の原因は本当に「不明」なのか
ぎっくり腰は、原因が特定できない非特異的腰痛に分類されています。ただ、通常のレントゲンに写らなくても、精密検査をすると椎間板に亀裂が入っていることがあり、椎間板が関係しているケースは少なくないと考えられています。
この亀裂が悪化すると、椎間板内部の髄核(ずいかく)が飛び出してくる椎間板ヘルニアの原因になることがあります。つまり、ぎっくり腰が椎間板ヘルニアの前段階である可能性も考えられるということです。
ぎっくり腰は「まったくの原因不明」というわけではなく、症状が治った後に再発予防をしておかないと、さらに注意が必要な状態につながる恐れがある。このように考えておくとよいでしょう。

ぎっくり腰にマッサージは有効?
ぎっくり腰へのマッサージは効果の感じ方が人によって異なり、行うなら発症直後の炎症が落ち着いてからの方がよいと考えられます。
マッサージはポピュラーな方法ですが、効果はそれぞれなので一概には言えません。あん摩マッサージ指圧師による治療的なマッサージには効果が期待できる面があります。一方、リラクゼーション目的のマッサージの場合は、効果は薄いと考えてよいでしょう。
理学療法士の視点から考えると、ぎっくり腰の発症直後は炎症が起きていると考えられます。そのため、筋肉に対するマッサージは、炎症が落ち着いてからの方がよいと考える人は多いと思います。
痛みのある部位は筋肉が緊張しやすく、それによって痛みが増強される場合があります。マッサージで筋肉の緊張を下げると痛みが軽減し、気持ちよく感じるかもしれません。また、筋肉がリラックスすることで、正常な腰椎の動きを引き出しやすくもなるでしょう。
したがって、マッサージは効果がある人もいれば、あまり感じない人もいる、というのが実際のところです。


ぎっくり腰の治療法はどれを選ぶべきか
ぎっくり腰の治療法には、マッケンジー法、マッサージ、モビライゼーション、AKA、ストレッチなど様々なものがあります。極端な話、何もしないという方法(自然治癒)もあります。ぎっくり腰は通常、自然に治っていくことが多いので、特に何かをしなければ治らないというものではありません。積極的な治療は、1日でも早く、少しでも痛みを楽にするためのものです。
どの治療法を選択すればいいのか迷う方もいるかもしれませんが、無茶なこと(逆効果になること)さえしなければ、自分に合うと感じる方法を選んでよいと思います。ただし、発症時に正しい診断を受けることは必要です。原因を断定できないぎっくり腰の場合は通常治っていきますから、その後の再発予防の方が重要になります。

ぎっくり腰を治す・繰り返さないための3つの習慣
再発予防には「良い姿勢を意識する」「適度な運動をする」「生活習慣を改善する」の3つが基本で、治療だけでなく予防にもつながります。
ぎっくり腰を経験したことのない人も、生活に取り入れることで予防効果が期待できます。
習慣① 良い姿勢を意識する
立っているときも椅子に座っているときも、骨盤が後ろに倒れて背中が丸くならないように注意しましょう。
最初から常に良い姿勢を保つのは大変なので、気づいたときに修正するように心がける程度でOKです。何かに集中しているときは無意識に姿勢が悪くなるものですが、それでも問題ありません。
悪い姿勢になってしまう → 気づいたときに良い姿勢を意識する → また悪い姿勢になる → また良い姿勢を意識する。この繰り返しで構いません。
立位では、耳・肩・股関節の付近を通って足首までが一直線になるのが理想です。個人差はありますが、この状態で背骨は理想的な形になり、腰の部分(腰椎)は軽く前方に凸のカーブを描きます。

習慣② 適度な運動をする(無理のない範囲で)
同じ姿勢が長時間続くと腰に負担がかかるので、時々体操などを取り入れるとよいでしょう。仕事中も時々姿勢を変えたり、軽くストレッチをしたりすると効果的です。
背中が丸くなったら、胸を張ったり上体を前に倒したりして軽くストレッチをし、ウォーキングなどの運動も生活の一部にできればさらによいでしょう。筋力を高めるための腹筋や背筋、スクワットも、無理のない程度で取り入れるのは効果的です。
背筋は痛みが出るようであれば、無理に行う必要はありません。痛みのない範囲で行いましょう。

習慣③ 生活習慣を改善する
腰が痛くなる要素として、生活習慣の乱れがあります。
- 姿勢が常に悪い状態になっている
- 腰に負担のかかる動作を無意識で行っている
- 体重が増えすぎてしまう(体重が増えると腰椎への負荷が増え、腰痛になりやすい)
近年多いのは、スマホやゲーム機を良くない姿勢で長時間操作することです。椅子に腰かけての長時間のパソコン操作も、腰や首に負担がかかります。また、運動のし過ぎもよくありませんが、運動不足も腰痛の原因となります。
日常的に腰への負担が多くなると感じる動作や姿勢は、極力とらないように努力しましょう。そうした細かいところから始められれば、腰痛になりづらいと言えるでしょう。
ぎっくり腰になりやすい姿勢・動作
ぎっくり腰のきっかけになりやすい姿勢を簡単に紹介します。
- 膝を伸ばしたまま、床から物を持ち上げる姿勢
- くしゃみをした瞬間の姿勢
- 突然腰をひねった姿勢
- 朝起きて、立ち上がろうとした瞬間
- 顔を洗おうとして屈んだ瞬間、起き上がろうとした瞬間
- 椅子から立ち上がろうとした瞬間
一概には言えませんが、急激に腰(椎間板など)に負荷がかかる姿勢は危険性が高いと言えるでしょう。すべての姿勢に注意を払うことはできませんから、まずは前かがみには極力ならないように意識することから始めましょう。
ぎっくり腰の原因として多い「姿勢の悪さ・筋力不足・柔軟性の低下・生活習慣の乱れ」の4つについては、ぎっくり腰の原因と予防の記事で詳しく解説しています。


よくある質問
Q. ぎっくり腰は冷やすのと温めるのはどちらが正しいですか?<br>発症初期は痛みのある部位を冷やしてもよく、温めるのは初期の炎症症状が治まってからが基本です。目安は発症後3週間ですが、実際に試してみて痛みが楽になる方を選んで問題ありません。
Q. ぎっくり腰は安静にしていれば治りますか?<br>痛みが激しい時期は安静が必要ですが、必要以上に安静にし続けないことがポイントです。痛みは通常数日程度で治まってくるので、そこから軽いストレッチなど無理のない範囲で体を動かし、早めに日常生活を再開していくことが回復につながりやすいとされています。
Q. ぎっくり腰で病院に行くとどんな治療をしてもらえますか?<br>レントゲンなどの検査のうえで、薬や湿布の処方が中心になることが多いです。診断名がつけば、評価・運動療法・徒手的療法・物理療法・日常生活動作指導・再発予防という流れでリハビリを受けられる場合があります。足のしびれや排尿排便の異常などがある場合は、早めの受診が必要です。
まとめ:ぎっくり腰は動ける範囲で活動し、リハビリと生活習慣の見直しを
- ぎっくり腰の治し方の基本は「安静・冷やす・温める・動ける範囲で動く」の4つ
- 発症初期は冷やし、温めるのは炎症が治まってから(目安は発症後3週間)
- 痛みが落ち着いたら、膝を抱える・膝を倒すストレッチなど無理のない範囲で体を動かす
- 必要以上に安静にせず、早めに日常生活を再開することが回復につながりやすい
- 足のしびれ・排尿排便の異常・安静時の痛み・発熱・外傷後の痛みがあれば早めに受診する
- 病院ではリハビリで原因の評価から再発予防まで取り組むのがおすすめ
- マッサージや各種治療法は人によって効果の感じ方が異なる。正しい診断を受けたうえで、無理のない方法を選ぶ
- 再発予防には「良い姿勢の意識」「適度な運動」「生活習慣の改善」の3つの習慣を続ける
ぎっくり腰は、自然と良くなっていくことが多い一方で、再発しやすい症状でもあります。日常生活の中で良い姿勢を意識し、ストレッチや筋トレを適度に続けることで、ぎっくり腰になりにくい体づくりが期待できます。
参考文献
- 日本整形外科学会・日本腰痛学会監修『腰痛診療ガイドライン2019』
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。症状が続く場合や不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
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